2007/08シーズンのA/H1N1亜型およびB型インフルエンザウイルスの分離−広島県
(Vol. 29 p. 16-16: 2008年1月号)

広島県における2007/08シーズンのインフルエンザの流行については、第43週(10/22〜10/28)に最初の患者が報告されて以降、徐々に患者の報告数が増加し、第48週(11/26〜12/2)には定点医療機関当たり1.71に達するなど、例年より約1カ月早い動きを見せている。そうした中、我々は12月5日現在までに、MDCK細胞と発育鶏卵を用いて、A/H1N1亜型15株とB型1株を分離している。これらの分離ウイルス株は、国立感染症研究所から配布された2007/08シーズン(今シーズン)用のキットを用いた赤血球凝集抑制(HI)試験(0.75%モルモット赤血球を使用)により(亜)型を決定し、AH1ウイルスについてはRT-PCR法によりNAの亜型も決定した。なお、 A/H1N1亜型ウイルスについては参考のために2006/07シーズン(昨シーズン)の抗A/New Caledonia/20/99血清に対するHI価も併せて測定した。

HI試験の結果、A/H1N1亜型ウイルス15株については、抗A/New Caledonia/20/99血清に対して、いずれもHI価10〜40(ホモ価320)であり、昨シーズンまでの流行で主流であったA/New Caledonia/20/99類似株とは抗原的に違っていると考えられた。一方、抗A/Solomon Islands/3/2006血清に対してはHI価160(ホモ価640)を示した株が5株認められたものの、HI価80を示す株が3株、HI価40を示す株が7株認められ、今シーズンのワクチン株である A/Solomon Islands/3/2006とは、抗原性が若干異なるウイルスも認められた。

一方、B型ウイルスは11月22日に採取された咽頭ぬぐい液から分離されたものである。患者は15歳の高校生で、前日の夜から38℃の発熱と頭痛、咽頭痛、咳の主訴で医療機関を受診し、迅速診断キットでB型インフルエンザが疑われたため、当所においてウイルス分離を実施した。なお、この患者と同居している6歳の妹も、受診した医療機関において実施した迅速診断キットでB型と判定されているが、これまでのところ、その2名以外にはB型を疑う患者は認められていない。

分離ウイルス株について実施したHI試験の結果は、抗B/Shanghai(上海)/361/2002血清に対してHI価10未満(ホモ価640)、抗B/Malaysia/2506/2004血清に対してHI価160(ホモ価320)であったことから、分離株はVictoria系統の株と考えられた。

今シーズン前半の流行の主流ウイルスになっているA/H1N1亜型については、ワクチン類似株の他に変異株もみられていることから、今後の動向に注意が必要であると思われる。一方、今シーズンのB型ウイルスについては、現在までのところ、京都市で第46週(11/12〜11/18)に山形系統のウイルス分離の報告があるだけであり(本号15ページ参照、B型ウイルスについても、どちらの系統が増えてくるのか今後の動向に注目したい。

広島県立総合技術研究所保健環境センター
高尾信一 島津幸枝 佐々木由枝 福田伸治 妹尾正登
広島県感染症情報センター 久保 滋
木原こどもクリニック 木原幹夫
広島県福祉保健部保健対策室 高橋美佳 荒川 勇

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