サルモネラ食中毒の現状と対策について
(Vol. 30 p. 206-207: 2009年8月号)

1.サルモネラ食中毒の発生状況
1)厚生労働省食中毒統計1)におけるサルモネラ属菌に起因する食中毒は、事件数、患者数ともに2000年以降減少傾向を示しており、近年は年間患者数 3,000人程度で推移している()。

2)サルモネラ食中毒の原因は、鶏卵および鶏肉が大半を占めるが、調理過程における二次汚染による食中毒が起こりやすい傾向もある。

3)病因物質となるサルモネラ属菌の血清型は、Salmonella Enteritidisが多くを占めており、2008年の事件数99件のうち、S . Enteritidisと確定した事件数は39件となっている。

4)原因施設としては、仕出し屋、給食施設、宿泊施設が多く、1事件当たりの患者数が多いのも特徴であり、患者数500名以上の大規模食中毒が、1999年に1件(IASR 21: 118-119, 2000)、2002年に3件(IASR 23: 255, 2002)、2007年に1件(本号5ページ)発生している。

5)死者数は少ないが、死亡事例となる血清型のほとんどがEnteritidis という特徴がある。1996〜2008年の血清型別死者数は、Enteritidis 14名、Typhimurium 1名(IASR 20: 273-274, 1999)、Haifa 1名(IASR 26: 19-20, 2005)となっている。

2.鶏卵の食中毒予防対策
1990年代から鶏卵を原因とするS . Enteritidis食中毒患者が増加したことを受け、1998年11月に食品衛生法施行規則の一部改正、ガイドラインの策定など、主に次の食中毒予防対策を講じた。

1)鶏卵の表示基準の設定
 ・賞味または消費期限(賞味期限を経過した場合は加熱殺菌を要する旨)
 ・生食用である場合は、生食用である旨と10℃以下で保存することが望ましい旨

2)鶏液卵の規格基準の設定
 ・成分規格(殺菌液卵:サルモネラ属菌検体25gにつき陰性、未殺菌液卵:細菌数検体1gにつき106以下)
 ・製造基準、使用基準、保存基準(8℃以下、冷凍は−15℃以下)

3)卵選別包装施設(GPセンター)の衛生管理要領の策定(洗浄水のNaClO2溶液濃度150ppm以上等)

4)家庭における卵の衛生的な取り扱い要領の策定(10℃以下の保存等)

3.鶏肉のサルモネラ属菌汚染実態調査
鶏肉によるサルモネラ食中毒の原因としては、鶏肉の加熱不十分や生食、調理過程における鶏肉からの二次汚染が挙げられる。

1)鶏卵から分離されるサルモネラ血清型は、大半がEnteritidis である一方、鶏肉から分離されるサルモネラ血清型はEnteritidis以外の血清型で、TyphimuriumやInfantisなど、多くの血清型が分離されている。

2)中央卸売市場等を管轄する19自治体において実施された2008(平成20)年度食品の食中毒菌汚染実態調査(http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/060317-1.html)における鶏肉関連品目のサルモネラ属菌検査結果はのとおりであり、鶏肉およびミンチ肉(鶏)が高率で汚染されていた。

3)陽性となった鶏肉関連製品 109検体のうち、49検体の血清型がInfantisであった。

4)2001〜2003年に実施された肉用鶏のサルモネラ分離率は20.1%で、血清型はInfantisが最も多かったとの報告2)がある。

 参照文献
1) http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/04.html#4-2 (厚生労働省食中毒統計資料)
2)渡辺治雄、食中毒菌の薬剤耐性に関する疫学的・遺伝学的研究、厚生労働科学研究費補助金食品安全確保研究事業(2005)

厚生労働省医薬食品局食品安全部
 監視安全課・食中毒被害情報管理室

今月の表紙へ戻る


IASRのホームページに戻る
Return to the IASR HomePage(English)



ホームへ戻る