2006年1月〜2009年8月に大阪府で発生したCampylobacter 食中毒事件
(Vol. 31 p. 10-11: 2010年1月号)

2006年〜2009年8月に発生した大阪府(大阪市、堺市、高槻市、東大阪市を除く)のCampylobacter による食中毒事件数は、2006年17件、2007年14件、2008年18件、2009年1〜8月12件の合計61件であり、患者数は合計で527名であった。事件数は5〜7月が多かったが、1月以外は毎月発生が見られた(表1)。

原因食品はほとんどの事件で不明であったが、生肉の喫食が多くの事件で認められた。生食した食肉の内訳は、鶏の刺身やタタキなどが29件(47.5%)、牛生レバーが7件(11.5%)であった(表2)。生肉の喫食がない、あるいは不明の事件においても、食肉の加熱不足および調理器具や手指を介しての二次汚染が発生要因として考えられた。

1事件当たりの患者数は、9名以下が42件(68.9%)を占めていたが、2008年に中学校の校外学習でのバーベキューを原因食品とする、110名の患者を認めた大規模事件が発生した(表3)。以下にその事件の概要を報告する。

事件の概要
発生の探知:2008年6月2日患者の親族から保健所あて通報。
発生年月日:2008年5月27日
患者数:110人、喫食者数207人
原因食品:不明(5月27日のバーベキュー料理:ロース、ハラミ、豚ロース、鶏もも肉、ウィンナー、キャベツ、タマネギ、トウモロコシ等)
摂取場所:野外活動センター
病因物質Campylobacter jejuni
主症状:発熱(38.7℃)、腹痛、下痢(4.6回)
潜伏時間:60.8時間
病因物質検出状況:患者便17検体中9検体からC. jejuni が検出された。血清型はLIO UT、Penner D群であった。検食の鶏肉1件からC. jejuni が検出されたが、血清型はLIO28、Penner Y群であり患者由来株と異なっていた。

発生状況の概要:5月27日、大阪府内の中学校が野外活動センターで校外学習としてバーベキューを実施。生徒198名と教職員10名が参加し、うち生徒110名が食中毒症状を呈した。バーベキューの材料は野外センターに併設される飲食店から供給されているが、同店では食肉販売店から仕入れた材料をそのまま中学校に提供しており、また、食肉販売店に他の有症苦情事例は認められなかった。従って中学生のバーベキューの加熱不足が原因と推定された。患者が当該バーベキュー喫食者に限られており、校外学習に参加していない他の学年から発症者がいないため、バーベキューを本事件の原因とした。

大阪府立公衆衛生研究所感染症部細菌課
田口真澄 川津健太郎 山崎 渉 依田知子 河合高生 神吉政史 坂田淳子 原田哲也
余野木伸哉 井澤恭子 勢戸和子 久米田裕子
大阪府和泉保健所 福永勝秀 石井篤嗣 山口貴弘

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