世界で検出されたワクチン株由来ポリオウイルス、2008年1月〜2009年6月
(Vol. 31 p. 22-23: 2010年1月号)

WHOが1988年に世界中のポリオ根絶を決定して以来、世界ポリオ根絶イニシアチブは、野生株ポリオウイルス(WPVs)に由来したポリオの全世界の発生を1988年125カ国35万例から2008年1,651例に減少させ、WPVsの伝播を断ち切れていない国を4カ国(アフガニスタン、インド、ナイジェリア、パキスタン)に減らすことに成功した。しかしながら、ワクチン株由来ポリオウイルス(VDPVs:ワクチン株から1%を超えて変異したウイルス)が、経口ポリオワクチン(OPV)接種率が低い地域でアウトブレイクを引き起こす可能性や、免疫不全者により長期間にわたって排泄される可能性があるため、野生ポリオウイルスの流行が根絶された場合には、すべてのOPV使用を中止することが必要である。

cVDPVs(関連性のある2例以上の麻痺症例で伝播したとされる伝播型VDPVs):コンゴ民主共和国で、2005〜2009年の間に2型cVDPVに関連する20例が検出された。このうち15例はKatanga州において発生しており、これらの株は2つの分子系統に分かれたが、それ以外の地域のものとは分子系統が異なっていた。エチオピアで、2008年10月〜2009年2月の間に、類似した2型cVDPVが4株分離された。ギニアで、コートジボワールからの難民キャンプで2009年5月発症した1例から2型cVDPVが分離された。ナイジェリアでは、2005年以来確認されている2型cVDPVアウトブレイクでの累積患者数が292例に上り、うち28%は1型および3型のWPVが伝播しているKano州において探知された。分子系統解析では、2004〜2006年に独立して出現した複数の2型cVDPV株に由来する同時並行的なアウトブイレクであることがわかった。

iVDPVs(遷延したVDPV感染のある原発性免疫不全症の人から分離されたVDPVs):アルゼンチンで、生後の数カ月間に3回のOPV接種を受けた、x連鎖無ガンマグロブリン血症の15カ月男児が急性弛緩性麻痺(AFP)を発症し、iVDPV(3.6〜 3.8%変異)が、1カ月ごとに採取された便検体、咽頭ぬぐい液から検出された。また、OPVの使用が1999年以後終了しているアメリカ合衆国で、2008年12月に、20年の病歴をもつ分類不能型低ガンマグロブリン血症の44歳の女性が四肢の上行性麻痺と呼吸不全を示し、2009年3月に死亡した。高度に変異した2型iVDPV(12.3%変異)が便検体から分離され、AFPの発症する13年前に、家族が受けた3回のOPV接種のうちの1回が原因であったことが示唆された。

aVDPVs(免疫不全症者あるいは環境検体からの分離でもなく、最終的な原因が特定できないため分類があいまいなVDPVs):アンゴラ、中国、エジプト、エストニア、エチオピア、フィンランド、インド、イスラエル、ロシア連邦、ソマリア、スイスで、下水やAFP患者の便検体から検出された。

WER編集部記:ナイジェリアでの2型cVDPVのアウトブレイクは5年間続いており、cVDPVsはWPVsのように、ポリオワクチン接種率の低い状況では際限なく流行しうることを示している。ナイジェリアにおける多系統2型cVDPVの出現や、コンゴ民主共和国とエチオピアでの関連のない2型cVDPVのアウトブレイクが認められていることは、3価経口ポリオワクチン(tOPV)の接種率が低い状況においては、2型cVDPVの出現リスクが高いことを示している。

エストニア、フィンランド、イスラエルの下水から検出された大きく変異したaVDPVsは、慢性排出者からのiVDPVsと遺伝的に類似した特徴をもっていたが、継続して検出されず、散発的に観察されている可能性がある。地域のtOPV接種率が低い状況でaVDPVsが出現した場合には、徹底した調査とポリオ予防接種率の確認を行わなければならない。

(WHO, WER, 84, No.38, 390-396, 2009)

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