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Vol.1 (1980/6[004])

<国内情報>
昭和54年日本脳炎(含疑似)患者個人票の集計結果


 昭和54年に各都道府県(市)から厚生省公衆衛生局保健情報課あてに送付された日本脳炎(含疑似)患者個人票総数は122枚であった。これらの症例について1例ずつウイルス学的検査,症候,疫学的事項について詳細に検討した結果,確認された日本脳炎患者総数は75名,これに未届確認例11名を加えると総計86名,うち死亡例26名(定型的死亡例6名を含む。)となり昭和53年度の88名に匹敵する発生である。この86例について調査した疫学的情報は次の通りである。

1.発生期間

初発は徳島県の6月13日で,終発は愛媛県の10月25日で,発生期間は135日であった。

2.性別

86名中不明2名を除き男性は46名,女性は38名で男女比は1:0.83であった。

3.予後

全治26名,後遺症30名,死亡26名,不明4名で致命率は30.2%,事故率は30+26/82で68.3%となる。

4.年齢別(死亡)

80代8(5),70代17(6),60代22(7),50代11(3),40代9(2),30代6(2),20代2(0),10代1(0),0〜9歳10(1)であり,60歳以上が全患者の54.7%を占めている。この年齢層の致命率は18/47で38.3%と高い。10〜59齢は29(7)で33.7%,致命率は24.1,9齢以下では10(1)で11.6%,致命率は10%と低い。0〜9歳の患者の年齢は8,4,3歳が各1名,5,2歳が各2名,0歳が3名となっている。0歳の患者が3名あったことは,母親の年齢層の抗体保有率の低下を示唆するとともに乳幼児を蚊の襲撃から被護する必要を感じさせる。

なお,患者血清診断に関し沖縄県では,昭和53年9月に実施した健康住民160名中23名が320倍以上のHI価を示し,この率は総数の14.3%であった。

5.地方別(表1,参照)

九州各県に多発し,その患者数は59名で全患者の68.6%を占めた。特に昨年多発県であった熊本県の発生は本年も多く35名と昨年の37名に匹敵している。四国では6名,中国8名,近畿11名,北陸・東海では各1名と少ない。

6.予防接種歴

86名中予防接種歴の記載のあるものは57名であった。このうち本年接種は,皆無であった。



1表





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