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過去40年間,英国における百日せきの発生数と死亡率とは,出産率の変化や第2次世界大戦といった諸要因によって大きく変化してきた。1957年に国の方針として予防接種が導入されてからは,百日せきの年間発生数と発生率とは1才以下を含めすべての年令層で低下した。
米国におけると同様,英国でも,予防接種によってまず家庭内の年長児に防御力を与え,それによって免疫されていない乳児の感染を予防することが,ワクチン効果の主たる基準であるように考えられる。
1977年以来,イングランドとウエルスにおいて主として5才以下の年令層に百日せきの大流行がおこっている。これは1974年以来,百日せきワクチン接種率が70〜80%から40%におちたことをみればおどろくにあたらない。ワクチン接種率と百日せき発生率との逆相関が現在流行中の各地でみられている。
英国においてワクチン接種率の低下した理由の多くは,「ワクチン接種障害児父母連盟」によって,このワクチンによる神経系副反応がひろく社会に知らされたことにあり,英国政府も接種事故に対する補償の原則に同意するに至っている。また,これまで副反応のふりかえり調査のみに関係してきたワクチンと予防接種に関する合同委員会は,今後は接種後の追跡調査を重視するようになった。公衆衛生検査機構(PHLS)は,その検査機能を活用して,1975年以後の副反応事例を探索しはじめた。一方,1976年には最初の全国的アンケート調査の実施に入り,小児けいれんを含め,脳症として入院したすべての3才以下の小児についてのデータが集められることになった。1980年にはそのまとめが出るはずである。
C.H.Stewart Harris
(1978年11月1,2,3日,米国NIHで開かれた百日せき国際シンポジウムにおける報告)
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