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Vol.2 (1981/2[012])

<国内情報>
ムンプスウイルスおよびコクサッキーA9型による無菌性髄膜炎


我々の行っているウイルス感染症の定点観測調査で,最近ムンプスウイルスおよびコクサッキーB9型感染による無菌性髄膜炎を経験したので報告する。なおウイルス分離材料はすべて咽頭拭い液であり,前者の分離にはヒト胎児皮膚細胞を,後者には初代サル腎細胞を用いた。

1.ムンプス髄膜炎

本症は90%以上が耳下腺炎を合併するといわれているが,合併しない症例もかなり存在すると思われる結果が得られた。すなわち,1979年5・6月ムンプスウイルスの分離された無菌性髄膜炎患者5例のうち,定型的な耳下腺炎の合併は1例のみで,他の4例には認められなかった(表1)。耳下腺炎陰性の2例は同時期家族が罹患しており,残りの2例は通園している保育所内でムンプスが流行していた。いじょうのことから,ムンプス流行期には耳下腺腫脹のないムンプス感染による髄膜炎にも注意を払う必要がある。

2.コクサッキーA9型による髄膜炎

1980年8月5日,4才8ヵ月の男児に発熱・頭痛・嘔吐・ケルニッヒ陽性・頸部強直が認められ入院した。これらの症状はいずれも5病日で焼失した。入院ときの髄液所見は,細胞数370/3,リンパ球78%,蛋白23mg,糖35mg/dlであり,この時の材料より本ウイルスが分離された。

また,同年6月から8月にかけ,上記症例の他に咽頭炎2例,上気道炎1例,風疹様発疹1例からも分離された。本ウイルスは無菌制髄膜炎をはじめとする多用な疾病をおこすものと考えられる。



岡山県環境保険センター 上羽 修 平松宗成


表1.ムンプス髄膜炎患者の症状および髄液の性状





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