HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.2 (1981/2[012])

<国内情報>
小児ウイルス病の定点観測における中枢神経系疾患からのウイルス分離成績


当所では1966年以来小児ウイルス病,特に無菌性髄膜炎(AM),熱性疾患を主体としてエンテロウイルスの定点観測を行っている。76年までの成績はすでに報告してあるが(臨床とウイルス,6,243,1978),今回は71〜80年の10年間の成績を述べることとした。

対象および材料:71〜80年に西尾市民病院小児科に受診し,ウイルス病と診断され,材料が採取されたのは1,754名で,そのうちAMは459名(26.2%),マヒ症4名,脳炎および脳症各2名であった。材料はおおむね第5病日までの髄液,ふん便および咽頭ぬぐい液,計1,260件である。

方法:MK細胞とHeLa細胞は全ての検体に,新生マウスは主にふん便に用いた。75年からは,WI−38細胞,77年以降はWI−38細胞に代えてHEL細胞をも加えている。

AMに関する成績1)各年別の患者数および分離者数:表1に示したが,71,72年は患者数が多く分離率も高いが,その後は患者数が減少している。2)材料別分離率:表1のように,髄液5.1%,ふん便38.2%,咽頭ぬぐい液20.0%で,髄液からはE6,E11が分離されているにすぎない。3)年令別分離率:表2に示したように181名(39.4%)から分離され,1,2才がもっとも高率で以後加令と共に低くなっている。71年にE11,72年にE6の流行が見られたが,これら流行を起こしたウイルスは広い年令層から,73年以降はいずれも散発的に数株ずつ分離されているにすぎないが,これらのウイルスは5才以下から多く分離されている。AMからは21種のエンテロウイルスが検出されているが,我国で分離報告されている殆んどのウイルスがみられた。なお,E30は78年に我国で初めて分離されている(臨床とウイルス,7,389,1979)。4)月別患者発生状況:表に示さなかったが,患者数は3月から増加し,6〜8月が最も多く,この4ヵ月で患者の63%,ウイルス分離者の81%を占め,9月以降急激に減少した。

脳炎,その他の成績:表には示さなかったが,脳炎等8名のうち,左上肢不全マヒ患者のふん便および咽頭ぬぐい液からPolio2型(ワクチン株)が分離されたが,その他の7名はすべて陰性であった。

愛知県衛生研究所 西尾 治


表1.無菌性髄膜炎患者の各年の検査数と材料
表2.無菌性髄膜炎患者における年齢別ウイルス分離状況





前へ 次へ
copyright
IASR