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愛媛県では,1975年以来感染症対策事業として,定点観測方式による小児のウイルス性疾患からの継続的ウイルス検索を実施している。今回は過去1年間のエンテロウイルス分離成績についてのべる。
材料と方法
分離材料:小児科外来患者の咽頭拭い液,糞便,水泡内容,髄液などを材料とした。
ウイルス検出法:主に初代サル腎細胞,HEL,哺乳マウスを使用し,必要に応じてVero,HEp−2,HEKを併用し,分離は常法に従った。
感染症発生状況の把握
県下8定点医院から毎月2回,日別疾患別(20種類)外来患者数の報告を受けた。年間報告患者総数は8751例で,そのうちエンテロウイルスの病因と思われる疾患々者報告数は2484例(28%)であり,報告の多かったものは,ヘルパンギーナ,手足口病で,無菌性髄膜炎は少数例であった。麻疹,水痘,突発性発疹は年間を通じて高頻度に患者がみられたのに対して,本年はムンプスが昨年に比べて激減し,麻疹が再び増加傾向を示した。
ウイルス分離状況
平常時および流行時の患者からは,総数292例のウイルスが分離された。そのうちエンテロウイルスの分離成績を表1に示した。コクサッキーA群38例B群1例,エコーウイルス7例の計46例である。コクサッキーA群は,主に6〜8月を中心に2年連続して流行がみられた手足口病患者から,昨年と同じコクサッキーA16型のみが分離された。しかし,今回の流行では,1978年流行(エンテロ71型による)時にみられた髄膜刺激症状を呈するような患者はいなかった。また6〜7月に流行したヘパンギーナ患者からは,4種類のウイルスを分離したが,本年の主流行株は,コクサッキーA4型,8型である。この疾患の病因ウイルスは,表2にみられる様毎年交代している。
次に,散発的にみられた無菌性髄膜炎患者33例から,エコーウイルスを7例分離した。このうち髄液から6例(エコー6型1例,9型4例)分離されている。エコーウイルスは表2の如く,この2年間本県では殆んど分離されておらず,今回の9型は1976年以来,6型は1973年以来7年振りの分離である。厚生省病原微生物検出情報によると,1979年にエコー6,7,9型が中国,九州,中部地区から報告されており,本県でも今回分離されたエコーウイルスが播種となる可能性も考えられるので,今後の監視が必要であろう。
愛媛県立衛生研究所 森 正俊
表1.1980年エンテロウイルス分離成績
表2.愛媛県における年次別エンテロウイルス分離成績(1975〜1979)
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