|
インフルエンザA(H3N2及びH1N1)及びBがしばしば同時に流行した。
H3N2亜型のAウイルスには多少の抗原変異がみられ,A/Bangkok/1/79(H3N2)とA/Bangkok/2/79(H3N2)がレファレンス株に選ばれたが,前者の方が多く流行した。北半球で流行が進むにつれ,A/Texas/1/77(H3N2)様株とA/Bangkok/1/79(H3N2)様株抗血清の双方に同程度抑制される変異株が出て来た。
BウイルスはB/Hong Kong/5/72とは大きく変異し,B/Singapore/222/79様となった。
1979−80年のインフルエンザシーズンは総じて比較的軽微であった。H3N2亜型内に若干の変異株がみとめられたが,従前の変異株A/Texas/1/77(H3N2)を大きく超えるものはなかった。新変異株によるインフルエンザは臨床的には従来と変化はなかった。欧亜大陸の流行はH3N2によるものが多く,南半球ではこの傾向は更に強かった。
H1N1亜型は日本,エジプト,パキスタンで広汎な流行を起こしたが,他では散発の域を出なかった。学童及び青少年が患者の主体を占めた。
B型のウイルスでは新変異株B/Singapore/222/79が出現し,これは旧B/Hong Kong/5/72と完全に置き換った。新変異株は北米で広く流行した。ちなみにこの年北米ではA型の流行は少なかった。ヨーロッパではB/Singapore/222/79様株はスコットランド,ギリシャで流行した。チェコと日本ではB型による流行第2波がみられた。B型でやや重症ないし超過死亡の上昇がみられたのはギリシャ,スコットランド及び合衆国であった。
(WHO,WER,No.5,2月6日号)
|