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Vol.2 (1981/6[016])

<外国情報>
多剤耐性肺炎球菌−コロラド州


1980年11月,血清型6B肺炎球菌の多剤耐性株(MRP)が髄膜炎にかかった11ヶ月児の脳脊髄液(CSF)から分離された。この株はペニシリンG,クロランヘニコールそしてテトラサイクリンに耐性であって,3剤耐性としては米国で報告された最初の例である。

最少発育阻止濃度(MIC)はペニシリンGに対して1μg/ml,クロランヘニコールには16μg/ml,テトラサイクリンには16μg/mlであり,リファンピシンには感受性であった。患児はペニシリン投与に反応せず,治療4日にしてなおCSFの培養とグラム染色陽性であったが,アンピシリン,クロランヘニコール,リファンピシンの投与によってはじめて回復した。

患児は約55人の子供とともにある保育所にあずけられていたので,この耐性分離株の保菌者調査がこの施設で実施された。咽頭培養は2才以下の小児室の14名中4名(29%)がMRP陽性であり,就学前児37名中4名(11%),そして従業員10名中1名(10%)が陽性であった。

MRP保菌者の世帯内接触者12名中6例(50%)において,また,非保菌者の世帯内接触者19名中0例においてMRPが陽性であった(P=0.0012)。過去2ヶ月における抗生物質使用の既往はMRP保菌と有意に関連していた。首都地区の6つの他の保育所の125名の小児ならびに職員の咽喉培養はすべてMRP陰性に終った。今日までのところMRPによる侵入性感染はそれ以上は認められていない。

この保育所におけるMRP伝播の予測調査が実施されつつある。このような株の保菌を根絶せしめるこころみは,担当研究者の意見によって除外された。というのは,この株による侵入性感染発症の危険度は極めてすくないし,また,保菌を終息せしめる効果的な薬剤投与法もいまだ不明であるので。

編集部註:ペニシリン耐性肺炎球菌の最初の報告は1967年に出たが,以来,世界各地からMIC0〜0.9μg/mlの相対的(低度)耐性株やMIC1μg/ml以上の耐性株分離の報告があった。臨床分離株において報告された相対的耐性株の分布率は,1%から16%の範囲にわたっているが,多くの調査はほぼ2%内外である。

1977年,多剤耐性肺炎菌が南アフリカで分離され,それ以来,英国,オーストラリア,ニューギニアそして米国で認められている。今回のものを含めた米国でのこれまでの報告は,臨床的に意義のあるすべての肺炎球菌分離株について,ペニシリン感受性を1μgのoxacillin discを用いてスクリーニングする必要性を強調している。≦19mmのzone sizeをもつすべての分離株はペニシリン投与に反応しない感染とかかわりがあるかもしれないので,ブイヨン稀釈法によるペニシリン耐性度試験と他の抗生物質に対する感受性試験に付されるべきである。≧1μg以上のペニシリン高度耐性株と多剤耐性株は保存し,そして地区,州,CDCに報告すべきである。

この報告は血清型6Bの肺炎球菌の最初の多剤耐性例であり,これまでの分離株の血清型は6A,19A,そして14であった。低濃度耐性株については非常に多くの血清型から由来している。現行の肺炎ワクチンは6Bでなく6Aを含んでいるので,6B感染予防のためには不適当である。

(MMWR,Vol. 30,No. 17,1981)






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