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MRSAによる地域社会獲得感染の最初の集発報告のあった1980年6月以来,ミシガン州デトロイト市のメディカルセンター病院には98名の患者が収容された。1市内病院における侵入性感染症患者からの分離ブドウ球菌株のほぼ4分の1がmethicillin耐性であった。(1−μgoxacillin discで発育不能か,ブイヨン稀釈法でMICが>4μg/mlのもの)MRSA感染患者はひきつづきデトロイト地区の病院に収容され,この報告における98人の患者のうち96名はヘロイン静注の既往をもっていた。
98人中53症例から得られた詳細な疫学そして臨床情報によると,29例が重症の侵入性疾病をもち,その中には細菌性心内膜炎,敗血症性血栓静脈炎,真菌性動脈瘤などが含まれる。3人の患者は死亡し,半合成ペニシリンのみの治療はしばしば効果がなかった。98症例からの83のMRSA分離株のファージ型別がなされ,うち70が29/52/80(1群)であった。
静脈内ヘロイン注射の既往をもつ96例の患者についての調査によると,集発のはじめに面接に応じた21名中の18名が"ダイナマイト"と呼称されていたヘロインをデトロイトの一地区の同一配布者から手に入れていた。これらのうちある者は,このヘロイン使用の合併症の予防のため経口用セハロスポリン製剤を常時使用していた。大部分の患者の使用していたヘロインの標本を,培養試験のため入手することはできなかった。12月4日頃この集団感染のニュースがこの地域社会に達すると,ヘロインはもはやダイナマイトのよび名での流通から姿を消してしまった。地区警察署が没収していた14サンプルのヘロインの培養からはブドウ球菌は全く検出できなかった。
(MMWR,Vol. 30,No. 16,1981)
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