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Vol.2 (1981/8[018])

<国内情報>
インフルエンザワクチン1981−82・合衆国厚生省公衆衛生局予防接種委員会の勧告


インフルエンザ流行は超過死亡をおこす。1968〜1981年の期間の合衆国におけるインフルエンザによる超過死亡数の合計は15万以上と推定される。1980〜81の流行は主としてA/Bangkok/1/79に抗原的に近縁なH3N2ウイルスによるものであったが,このための超過死亡数は1968〜69の大流行以来の最高値を記録した。

合衆国におけるインフルエンザ予防接種の目的は超過死亡を減少せしめること,すなわちインフルエンザ罹患の結果,重篤な合併症をおこしたり死亡に至る危険度の高い者を感染から防御することにある。

接種方針 以下の高危険度群には毎年インフルエンザワクチンの接種を行うことが望ましい。

A.成人,小児を問わず以下の疾患を有する者。

1) 循環動態異常を伴うあるいは異常をおこす恐れのある心臓疾患。

2) 肝機能低下を伴う慢性疾患。

3) 残余窒素増加あるいはネフローゼ症候群を伴う慢性腎疾患。

4) 感染に対する抵抗力の減退を来たす代謝疾患,例えば糖尿病。

5) 慢性かつ重症の貧血症。

6) 免疫力低下を来たす疾患(免疫抑制療法下にある者を含む)。

B.65才以上の者

1981〜82年のインフルエンザワクチン(表1)

ワクチンに含まれるウイルスの種類は1980〜81年におけるのと同じであるが,抗原量は各ウイルスとも2倍になり15μg/0.5mlである(1980〜81年は7μg/0.5ml)。インフルエンザワクチンはwhole-virusワクチンおよびsplit-virusワクチンの2種類がある。小児においては後者の方が若干副作用が少ないので,13才以下の年令層にはsplit-virusワクチンの使用が望ましい。28才以下の年令層は過去においてH1N1ウイルスの感染を受けたことがないので,これまでにワクチン接種を受けていない場合には2回接種を受ける必要がある。

妊婦における予防接種 上述の適応ある妊婦には接種が行われることが望ましい。インフルエンザワクチンが母体あるいは胎児に傷害を与えるという証拠はないが,妊娠最初の4ヶ月間の接種は避けた方が賢明であろう。

副作用

局所:発赤・硬結

全身症状:1) 発熱,倦怠,筋痛等。インフルエンザウイルス自身の毒性によるものであり,ワクチン中のウイルス抗原に初めて遭遇する小児に発現しやすい。注射後6〜12時間に始まり1〜2日持続。

2) 恐らくアレルギー性の即時反応。ジンマ疹呼吸困難等。ワクチンに微量に含まれることがある卵の蛋白に対する過敏症と考えられるので,卵を食べた後に口唇や舌の腫脹や呼吸困難を呈する者にはワクチン接種は行うべきでない。

3) ギラン・バレー(Guillain-Barre)症候群。A/New Jersey/76(Hsw1N1)ワクチン接種後にのみ見出された副作用で,非接種者の5〜6倍の頻度,すなわち接種100万例当たり約10例の頻度で発生した。致命率は5%。しかし,それ以前,あるいはそれ以後のインフルエンザワクチンにより本症候群が発生したという成績は得られていない。

(MMWR Vol. 30 No. 23 6/19/81)



予研 杉浦 昭


表1.年令別ワクチン接種量





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