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1979年1月から1981年3月までの間に,10名の患者がCampylobactor fetus subsp. fetusによる敗血症であるとしてサンディエゴの郡衛生部に報告された。それまでの2年間はそうした感染症は1例も報告されていなかった。その10例中9症例は重い基礎疾患があって,メキシコのTijuana地区にある2つのクリニックのうちのひとつで"栄養療法"というものを受けたことがあった。そして10番目の患者は自宅で同クリニックの指示による同様の処方の治療をうけた。
9名の患者は32才から75才で,悪性腫瘍をもっており,のこり1名は13才の少女でsystemic lupus erythematosusをわずらっていた。いずれの患者も症状が極めて悪くなってからサンディエゴの病院に入院したものであった。
9名の患者の血液から,そして1名の患者の腹水からC. fetus subsp. fetusが分離された。これらの患者に共通な唯一の暴露は前の週に栄養療法をうけたことであり,この治療法は新鮮な果物と野菜ジュース,そして仔牛の肝臓を生で経口摂取することである。そしてコーヒーによる灌腸が追加された。治療期間は5〜14日に及ぶ。場所がメキシコであったため,これらの食品や使用器具を菌培養に供することができなかった。この療法をうけた患者の数がどのくらいになるかも不明である。
編集部註:C. jejuniが健康人に下痢をおこすのとは対照的に,C. fetus subsp. fetusは慢性の肝や腎の疾患,悪性腫瘍など免疫機能のおちた個体に全身的な感染をおこす。牛や羊の生殖道や腸管がこの菌の一般的な生息場となっている。しかし,これまで2つの研究報告においては,動物への暴露の例は半分以下である。菌血症,血管内感染,脳膜炎,膿瘍などがもっとも頻繁に報告されている。
上述の10例の場合は,共通に栄養療法をうけており,その食品のうちのひとつ,あるいはいくつかが感染源とみなされるが,それ以前の文献から推定しても,生の仔牛肝が一番その可能性が高い。
(MMWR,Vol.30,No.24,1981)
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