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Vol.2 (1981/9[019])

<国内情報>
国内における56年度春季恙虫病発生について


非アカムシ媒介性恙虫病は秋田県および新潟県では春季に発生することが多く,関東およびその以西では春に発生することが稀で,ほとんど秋期に発生していた。群馬県でも野外調査で春にフトゲツツガムシの増殖および野鼠のリケッチア保有率の増加がみられるが,患者発生はみられなかった。

それが本年度は長野県,群馬県で春季発生がみられ,新潟県でも発生の増加がみられたので,関連のある大学の教室および衛生研究所の協力を得て7月末日までの発生状況をまとめたので表出して述べたい。

56年1月に宮崎県で1例,鹿児島県で2名発生しているが,昨年の秋季流行の残りと考え,表から除外している。

表の説明になるが,1Fは間接蛍光抗体法による検査のことで,機関によって抗原の違いはある。秋田県の場合はKarp, Gilliam, Katoの各抗原を用い,患者血清とそれぞれの抗原との反応程度より,感染リケッチア株の型を推測している。

IPは秋田大学の須藤教授の教室で実施している酵素抗体法による検査である。この方法ではIgGとIgMとに分けて抗体価を測定している。CFは補体結合反応による検査のことで,Karp, Gilliam, Katoの標準株より抗原を作製して実施しているが,それらのうち反応値のもっとも高いものを血清抗体型として表示した。この型と感染リケッチア株の型とが一致するか否かは不明である。なお,新潟県の例でKarp or Gilliam型が1例みられるが,5月18日発病し,6月4日採血の血清でKarp抗原にもっとも高く反応していたが,7月7日採血の検査ではGilliam抗原にもっとも高く反応した例である。

昨年秋から1月にかけて多くの発生をみた鹿児島県では11名の春季流行がみられている。

春季発生と秋季発生の関連については今後の課題になると思う。協力をいただいた機関を下記するが,発生がないと報告された県は表から除いている。

北海道立衛生研究所

山形県衛生研究所

新潟県衛生研究所

東京都立衛生研究所

静岡県衛生研究所

長野県衛生公害研究所

富山県衛生研究所

高知県衛生研究所

大分県公害衛生センター

宮崎県衛生研究所

鹿児島県公害衛生研究所

沖縄県公害衛生研究所

秋田大学医学部寄生虫学講座

新潟大学医学部医動物学教室

<追記>厚生省の届出情報によれば,5月福島県で1名発生が報告されている。



群馬県衛生公害研究所 氏家淳雄


国内における56年度春季発生





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