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Vol.2 (1981/9[019])

<連絡事項>
アンケート調査の結果について


微生物検査情報システム化に関する研究班実行委員会

全国各地方衛生研究所の協力をもとに病原微生物に関する情報収集が開始されてから一年が経過したのを期して,本研究班実行委員会は,これまでの反省と今後の活動の発展のための検討資料をうるため,アンケート調査を実施した。全機関から回答が寄せられ,その集計結果は,すでに本年5月に名古屋市において開催された衛生微生物技術協議会第二回研究会の席で報告したところである。また,各地研からの御意見のうち実行可能なものについては,本研究班活動のその後の運営に反映させてきた。以下にその概略を記載して御参考に供する。

A.病原細菌関係

特に病原細菌関係の情報収集については,本年7月から発足された厚生省感染症サーベイランス事業の抗原体情報部門の運用との係わり合いにおいて,なお検討を要する問題を残しているので,具体的な設問について報告する。

1.病原菌検出報告に係わる検査の実情調査

月報としての報告が実施されている病原菌を対象とする検査は衛生研究所と保健所とで分掌されていることが多いと考えられるので,まずその実態をお知らせ願った。その結果は表1に示す通りである。

回答のあった65の衛研中50(77%)では,何らかの形式で検査を保健所と分担し合っている。その内容は,すべての病原菌分離同定を保健所にまかせ,分離菌株の型別のみを衛研で実施するというものや,特定の病原菌のみを対象とする検査を保健所にまかせるものなど,地方により様々であった。検査を保健所と分掌している50の衛研のうち,現在月報の中に保健所由来の情報まで含めているのは19衛研(38%)で,その中にはすべての保健所由来情報を包含するものもあり,同定依頼のため菌株の送付があったもののみを含めているというものもある。

衛研のみで検査を実施しているというのは12/65(18%)で,これらはすべて市立の衛研であった。なお,病院や医師会検査所などからの依頼検査の結果も含めて報告しているという衛研が19ヶ所あった。

このような保健所との検査の分担に係わる問題については,保健所由来情報が包含されていたりいなかったりする情報内容の不統一を改善すべきだという意見が多くの衛研から寄せられている。保健所由来情報をすべて包含する方向で統一をはかりたいものである。なお,他の衛研に型別を依頼したような場合,菌株を分離した立場からと型別した立場からと両方から報告されるかも知れぬ情報内容の重複をどうするかという問題提起もあった。

2.収集情報の内容について

収集情報の内容を現状のままでよいとするものは38/65(58%)で,拡大せよとするものは13/65(20%)であった。後者に多かったものは,赤痢菌の現行群別分離菌株数月報を型別にした方がよいという意見であった。この可否についてはアンケート内容にも盛り込んであったが,その回答を集計してみると,型別分離菌株数を月報で報告可能とするものが63/65(97%)であり,実行に移せそうである。レンサ球菌の血清型を月報で収集することは不可能とする衛研の方が多かった。

この他,月報の対象とした方がよいという意見のあった菌種を列挙するならば,プレシオモナス,クレブシエラ,レジオネラ,クロストリジウム・ディフィシール,マイコプラズマ,結核菌などがある。ただし,それほど多くの衛研からの要望ではなかった。

なお,現行のシステムでは検査材料取扱状況についても報告を願っているが,これを不要とする意見も比較的多かった。

年報として収集すべき情報内容に関しての質問に対する回答は次の通りであった。大腸菌の種類,血清型については,報告可能とするもの12/50(24%),一部可能22/50(44%),不可能16/50(32%)であった。腸炎ビブリオの血清型については64/65(98%)が可能とのことであった。

3.主な病原菌の薬剤感受性調査について

わが国には,主な病原菌の薬剤感受性を長期的展望をもって全国的に調査する系統だったシステムがこれまで存在しなかったことから,衛生微生物技術協議会の一つの事業としてこれを取り上げてはどうかという声が二・三の衛研から寄せられていた。そこで,その可能性をさぐる意味で,このことについても設問した。結果は賛成29/50(58%),反対11/50(22%),回答なし10/50(20%)であった。賛成票に附された意見としては,方法論の標準化の必要性を説くものが多く,検査対象は適当な方法で抽出した一部の菌株に限ったほうがよいとする意見もあった。

B.全般的問題等に対する意見( )内地研数

〔T〕報告範囲について

1.病院,検査所,保健所(直接参加)等の情報を含めよ(9)

2.書式−3検査件数報告は内容・目的があいまい(3),検出率が出せるように改めたい(7)

3.集団発生の事例数,患者数を収集(3)

4.血清情報も収集(3)

5.細菌も個票で(1)

〔U〕報告期日について

1.書式−3を翌月末日までに(2),4半期毎に(1)

2.書式−4〜6を3月末日までに(1)

〔V〕月報還元について

1.字を大きく(13)

2.配布部数の増加希望(保健所まで)(4)

3.最近の流行,大規模発生などニュース・トピックス,情報交換,速報を中心とせよ(10)

4.その月の情報に関する解説的コメントが必要(6)

5.病院などに還元できる記事をのぞむ(2)

6.地図による流行状況の図示の採用(2)

7.センターより直送を希望(3)

8.週報(2),2週間に1回(1)還元せよ

2ヶ月おくれを短縮せよ(1)

C.その他

1.予算化が必要(6),このため厚生省よりの通達,公文書がほしい(3),返信用封筒を要求(1),端末の設置を要求せよ(1)

2.検査法および情報の統一,あるいは正確さを求める(5),講習会(1),市販血清の管理およびこれに関する情報提供(1),地研間の連携の必要(1)

3.報告用紙をB版に統一(2),2部複写式希望(1)

4.現状はかえない方がよい(3),拡大より継続に努力を(1)

この他,すでに実施しているものとして年報発行(6),ウイルスについてヒトとヒト以外を区別(2),感染症サーベイランス事業との関連についての説明を求める(10)などがあった。また,報告が重複する可能性については,現行のシステムでは地研と伝染病院・検疫所情報との重複は当然あるものと考えられるので当分の間,別ファイルで取扱うこととしている。ウイルスに関し個別情報が知りたいという要求があったがこの場合は現状では「医学のあゆみ」を参照されたい。

以上アンケート調査結果の概略を述べたが,この種の病原微生物検出情報のシステム化を推進するに当たって,貴重な資料が得られたと考えている。本実行委員会では今後の活動にこの結果を有意義に反映させて行く所存です。ご協力ありがとうございました。



表1.細菌検査における衛研・保健所間の役割分担と病原菌検出情報の内容





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