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Vol.2 (1981/11[021])

<国内情報>
群馬県におけるウイルス分離状況(昭和56年4月〜8月)


群馬県ではウイルス感染症の実態を把握するために,昭和48年度よりウイルス感染症の定点観測を行ってきている。現在の定点地点は,情報を的確にするため県内を適当に区分して17の病医院をえらんでいる。また本年7月から始まった厚生省の感染症サーベイランス事業の検査定点(群馬県では10医療機関)もこの17医療機関に含まれており,患者検体収集もスムースに行われている。今回は昭和56年4月から8月までの間に送付された患者検体ウイルス分離成績について報告する。

4月中に送付された患者検体(主に咽頭ぬぐい液)は46例で,このうち発熱患者(インフルエンザ様症状の患者も含む)35名から,インフルエンザ香港型A(H3N2)が3株,アデノウイルス2型が2株分離された。またウイルスは分離されなかったが5名の患者組血清で,B型に有意上昇が認められた。A(H3N2)型が分離された3名の年齢分布は,生後4ヶ月〜1.4ヶ月の乳幼児であった。またB型5名の陽性者は,4月下旬に全く地域を異にする市内の小学校で,インフルエンザ様疾患の発生のために,学級閉鎖を実施した学童の成績である。5月は18検体と例数が少ないが,発熱を伴う咽頭痛の患者1名から,乳のみマウスを用いて,CA5型ウイルスを分離した。6月には20例のヘルパンギーナ患者のうち,14名から(70%)CA5型ウイルスを分離した。またCA5型ウイルスは発熱,夏かぜ,ウイルス性口内炎などの患者からも分離された。夏かぜ様症状の患者の中には,咽頭ぬぐい液からCA5型ウイルスが,便からCB2型ウイルスが同時に分離された例もある。7月は検体数が52例と多くなったが,臨床症状およびウイルス分離成績は,6月と同じような傾向を示した。22名のヘルパンギーナの患者からCA2型ウイルス1例,CA5型ウイルスが11例検出された。また発熱患者5名中2名,夏かぜ様患者7名中3名,特に髄膜炎症状を呈した9名の患者のうち,2名の患者からもCA5型ウイルスをそれぞれ分離した。8月になって咽頭結膜熱の検体数が9例と多いが,現在その一部を検索中であり,まもなくその正体も判明するであろう。

5月から7月にかけて,発熱,夏かぜ,咽頭痛,ウイルス性口内炎,ヘルパンギーナおよび髄膜炎などの患者から,CA5型ウイルスが多く分離され,このウイルスが県内のウイルス感染症の主流行をなしていたことが判明した。このCA5型ウイルスの県内での流行は,昭和50年の春から夏にかけてみられている。CA5型ウイルスが分離された患者37名の年齢分布をみると,0〜4才23名(62%)と乳幼児が圧倒的に多く,ついで5〜9才10名(27%),10〜14才3名,15才以上1名となっている。



群馬県衛生公害研究所 重原 進 中村忠義


患者主訴と月別ウイルス分離状況





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