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Vol.2 (1981/11[021])

<国内情報>
神奈川県における今年夏の分離ウイルスについて


3月頃から流行し始めた風疹が6月をピークに漸減していったのとは対照的に,7月以降はエンテロウイルス感染症を中心とした,いわゆる夏型の感染症がめだちはじめた。

今年のヘルパンギーナは昨年にくらべ1ヵ月近くも遅れ,7月中旬をピークとする流行となった。分離ウイルスはCox.A5型15株を中心に,A2,6,10型および未同定株の合計34株が検出されており(分離型76%),今回の流行はA5型が主流であったと思われる。

手足口病は相模原市を中心に小流行し,4〜9月までの間に県下全域で486名の患者が報告された。このうち,相模原地区の1人の患児からは,Entero 71型が分離されている。神奈川県における手足口病はCox.A16とEntero 71が交互に病原となり,3年間連続した流行を起こすのがここ10年来のパターンである(図1)。これから推測すると,次回の流行は昭和58年以降ということになるが,今年になって局所的流行を起こしたということは,このパターンに変化が生じてきたのか,あるいはきめ細かなサーベイランス体制の確立により,従来見逃がされていた流行をキャッチしたのか,今後の流行に興味がもたれる。

無菌性髄膜炎はムンプス性のものを除けば例年と発生状況に大差はない。これまでに同定されているウイルスはEcho 11型12株とCox.B2型1株である。Echo 11は全国的な大流行を起こした昭和46年以来,散発的に分離されているにすぎない。そこで,今年採血した神奈川県在住の小児血清について抗体調査(4倍スクリーニング中和抗体)を行ってみると,分離株に対して4歳まではほとんど抗体を持っておらず,10歳以下の保有率も14.6%(14/96)と低率であったことから,流行の下地はできつつあると思われる。

一方,結膜炎,プール熱などからはAdeno 3型が多数分離された。



神奈川県衛生研究所 鈴木利壽 斉藤直喜


図1.県内S病院における手足口病の月別発生状況 昭和48年〜50年および53年〜55年の比較





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