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Vol.3 (1982/6[028])

<国内情報>
香川県における手足口病の流行について


1)流行の概況

 香川県では,昭和54年に8月下旬から翌年1月に終息した秋季型の流行があり,ピークは10月であった。今回はそれより約3ケ月ほどずれて,昭和56年11月中旬より始まり,昭和57年3月に入って減少に向かう冬季型の流行で,多発したのは12月,1月で,現在までの発生状況は表のとおりである。

2)サーベイ定点別および年令別発生状況

 県下は東讃,中讃,西讃と地形的に3ブロックに分けられるが,東讃に含まれる小豆島,大内では流行がみられず,高松市(定点5)でも20%である。流行は主に中讃(丸亀,坂出,琴平の一部)を中心におこり,患者数の約76%を占めている。

 年令別では1〜4才が80.0%で大部分を占め,次いで1才以下10.6%,5〜9才が8.9%で,ほとんどが4才以下であった。

3)臨床症状

 臨床像の主なものは無熱または短期間(1〜3日)の発熱と皮膚発疹および口腔粘膜疹である。今回我々の経験例では,発熱したものは比較的少なく,口腔粘膜疹も少数であった。口腔痛を訴えてくるよりも,手足の発疹に気付いて来院しているものが多かった。

 皮膚発疹は主として指趾,手掌,足底の斑状丘疹ないし,小水泡性発疹で大きさは1〜3mm位で小さく,数も少なかった。時には臀部特に肛門周辺部,膝の内側,足背にみられた。経過は比較的軽く,1〜2回の受診であった。なお当県では,髄膜炎を合併したものはなかった。

4)ウイルスの分離状況

 今回の流行では,10月以降CA−16が11株分離され,エンテロ71は分離されず,県下では一昨年にひきつづきCA−16の流行である。

 なお,ウイルス分離には,CMK細胞(予研より分与)を用いているが,従来初代において大部分のウイルス分離が可能であったが,本流行では少なくとも3代以上の盲継代が必要であった。これはウイルスの変異があったのか,細胞の感受性が継代中に変わったのか,今後の検討を要するところである。



香川県衛生研究所 岡崎 秀信 山西 重機
松原小児科医院 水島 利治
国立香川小児病院 古川 正強


表.手足口病の患者発生状況





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