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Vol.3 (1982/12[034])

<国内情報>
札幌市におけるSストアー清田店に起因する集団食中毒について


札幌市において発生したSストアー清田店に起因する集団食中毒は,患者数(届出発症者数)11月15日現在,7121名と未曾有の規模となった。

この原因究明のため,Sストアー清田店における給水設備復元後の水質検査,同店付近の環境調査,土壌検査,排水検査,ボーリング検査等を実施するとともに,細菌学,公衆衛生学,疫学,衛生工学等の学識経験者をまじえた原因究明委員会を設置し,審議を重ねた。

その結果,本集団食中毒は,

1.Sストアー清田店に何らかの形で関係する者が発症していること。

2.Sストアー清田店の開店日である本年10月9日以前に発症した者がいないうえ,発症のピークが同店における井水使用の最終日である同年10日14日であること

3.同店における水を飲んだ者の発症率が高いこと

また,Sストアー清田店の給水設備のうち

1.井戸ピットの構造に欠陥があり,ピット内に汚水の漏水とたまり水がみられたこと

2.給水設備復元後の井水の検査で受水槽より病原大腸菌(O6:K15)が検出されたこと

3.井水原水の塩素消毒の信頼性に疑問があること

さらに,

1.同店周辺の排水路等から病原大腸菌(O6:K15)が検出されたこと

2.初期発生患者便の多くからカンピロバクター・ジェジュニおよび病原大腸菌(O6:K15)が単独または重複して検出されたこと

3.後期発生患者便から,病原大腸菌(O6:K15)が検出されたこと

等の事実が判明,もしくは認められた。

以上のような患者発生の疫学状況,Sストアー清田店における給水設備の衛生状況,同店周辺における環境状況および患者の検便結果を総合的に考察して,本食中毒の原因食品は,Sストアー清田店における飲料水または,これを使用した食品であり,病因物質はカンピロバクター・ジェジュニおよび病原大腸菌(O6:K15)であると断定された。

食中毒発生の概要:

1.発生年月日 昭和57年10月9日(土)

2.発生場所 札幌市豊平区(株)Sストアー清田店

3.摂食者数 不明,10月9日〜15日Sストアー清田店利用者数173274名

4.患者数(届出発症者数) 7121名(11月15日現在)

5.原因食品 10月9日から10月15日におけるSストアー清田店の使用水

6.病因物質 病原大腸菌(O6:K15),カンピロバクター・ジェジュニ

7.検出菌の確認同定 病原大腸菌(O6:K15)H抗原:H16,毒素産生:ST,LTとも産生。カンピロバクター・ジェジュニ血清型:TCK12,TCK20/21。いずれも東京都立衛生研究所にて確認していただきました。

食中毒発生の探知:

 昭和57年10月14日午後4時15分,札幌市教育委員会より保健所にK小学校において下痢,腹痛等による児童の集団欠席の通報,さらに小児科医院より食中毒の届出があり,調査の結果,この患者の多くが10月9日に開店したSストアー清田店に行き,飲食していることが判明した。

検査実施状況:表1

検査結果:表2



表1.検査実施状況
表2.検査結果


札幌市衛生研究所 高杉 信男







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