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Vol.3 (1982/12[034])

<国内情報>
岐阜県における無菌性髄膜炎患者の多発について


岐阜県感染症サーベイランス情報によれば,無菌性髄膜炎患者は1月から10月までに134人であった。表1で示されるように,今夏7月より増加傾向を示し初め,9月にピークに達した。昨年同期(7月〜10月)の患者数72人と比較すると,今年は103人で昨年の143%に相当し,小流行と考えられる。患者の年令分布は0歳から15歳以上に及んでいる。流行性耳下腺炎や風疹後の無菌性髄膜炎患者をのぞいた原因不明の患者は108人であった。そのうち92人は7月から10月までに集中的に罹患している。

表2に示したように,今夏から秋にかけての原因不明の無菌性髄膜炎患者39人についてウイルス分離を実施しているが,まだ検査中のものもあるが,現在までに9月までの患者については検査が終了したので報告する。

分離に用いた細胞および動物は,HeLa細胞,CMK1-S1細胞および生後24〜48時間の乳呑みマウスである。現在までに,Echo-11が4症例,Cox.B-3が6症例より分離されたが,Echo-11はHeLa細胞でのみ分離され,Cox.B-3はHeLa細胞とCMK1-S1細胞で分離され,乳呑みマウスからはウイルスは分離されなかった。

7月にCox.B-3が1症例の糞便より分離された。8月にはEcho-11が1症例の糞便より分離された。9月には16症例の検査を実施し,そのうち8症例の髄液および糞便よりウイルスが分離された。分離されたウイルスはEcho-11が3症例,Cox.B-3が5症例より分離された。

Echo-11は標準株抗血清20単位では同定不能で1971年分離株に対する抗血清20単位,50単位では全然中和されなかった。150単位を使用して初めてVirus Controlに比べて中和されていたが,観察日数が多くなるに従って,break throughし,完全には中和されなかった。Cox.B-3は標準株抗血清の20単位で容易に中和された。

岐阜県における夏から秋にかけての無菌性髄膜炎の病原ウイルスは,現在のところでは,Echo-11とCox.B-3によることが明らかとなった。Echo-11は昨年も患者髄液より分離されているので,2年連続で分離されたこととなる。



表1.岐阜県における無菌性髄膜炎患者発生状況(1981−1982年)
表2.臨床的に推定原因不明な無菌性髄膜炎患者からのウイルス分離成績(1982年)


岐阜県衛生研究所 三輪 智恵子





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