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Vol.3 (1982/12[034])

<国内情報>
三重県における無菌性髄膜炎について


1981年Echo18の無菌性髄膜炎の多発から,1982年はE.18の流行を予測していたが,本県での最初の確認患者は6月21日に発病した8歳の子供で,Cox.B3が原因であった。サーベイによる患者の発生状況は図1に示した。1月から5月までは5名前後の患者数であるが,6月には22名の患者が報告され,地域的には鈴鹿市での患者が10名,45.5%を占めていた。7月には伊勢市が多く12名中4名,33.3%,8月は松阪市が多く25名中6名,24%で以後松阪市において多発し,9月は68名中34名,50%,10月86名中65名,75.6%であった。11月に入って終息の様相を呈し,4名の発生に止まっている。患者の年齢は松阪市の例についてみると,0歳1名,1−2歳10名,3−4歳18名,5−9歳39名,10−14歳14名,15歳以上0名となって,幼稚園児・小学校低学年層で約半分を占めている。

ウイルス分離の成績は表1に示した。MK初代細胞を用い,2代まで継代して判定した。分離ウイルスは,Cox.A9,Cox.A16が各1例,Cox.B3,2例,Entero71(E.71)4例である。発生地域との関係から推測すれば,6月の鈴鹿市,9,10および11月の松阪市,伊勢市の患者の原因はE.71は考えている。

本年の三重県における無菌性髄膜炎の特徴は,患者の年齢が1981年秋の流行では4歳以下に集中したのに比べ,1982年では幼稚園児から小学校低学年層に多く認められたこと。検討の余地はあるが,Cox.A16が無菌性髄膜炎患者から初めて分離されたことである。

なお,E.71の同定にあたっては,CPEが3日で75%を呈示しても,その希釈は10−30倍程度に止めて中和に用いた方がよく,高希釈はCPEの発現を阻止する結果をもたらすようである。初代MK細胞でのE.71の増殖は,せいぜい103程度であると思われる。

表1.無菌性髄膜炎からの分離ウイルス
図1.月別無菌性髄膜炎発生状況


三重県衛生研究所 桜井 悠郎





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