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Vol.3 (1982/12[034])

<外国情報>
ポリオワクチン関連麻痺例―WHO


1962年にWHOはポリオ生ワクチンに伴うリスクについての正確な情報収集と,これを防ぐ手段を考えるために,Collaborative Studyを組織した。最初の10年の調査が最近報告された。

13ケ国が参加,うち9ケ国は生ワクチンのみ,2国は不活化のみ,他の2国は両タイプのワクチンを使用している。13国中6国では低年間発生数なのでこの群についてまとめて麻痺例発生のリスクを算定した(表のbR,4,5,9,10&11)。122(43%)がワクチン関連症例(52接種者,70接触者)。年令は大部分が5歳以下,69%は1歳以下。これはワクチンスケジュールによる。反対に接触者は69%が15歳以上,49%が25歳以上。

分離ウイルスは,ワクチン関連症例では多くが3型(42/76),5例が1型。反対に,ワクチンと関連のない群では93/132が1型で,型内鑑別されたものはすべて野外株型。調べられた92例中12例が免疫不全をもち,9例はワクチンと関連のない群に属する。

麻痺発生は接種例52中46が初回投与後。43/59が未接種者。6例が1回投与,4例が2回投与を受けている。

リスクの算定には3方法が考えられる。

1)人口に対する発生数:6国の集計で,人口は403百万,10年間に122のワクチン関連症例(平均0.03/百万/年)が報告された。このうち70(0.02/百万/年)が接触者,52(0.01/百万/年)が投与者。全例がワクチンに起因すると考えるとリスクは投与者で1/100百万/年,接触者は1/50百万/年となる。

2)リスク対象にある子供年令群に対する発生率:ワクチンを受ける年令のみを考えた方が正確な算定ができる。これは百万あたり1以下となる。

3)投与ワクチン量に対する発生率:このリスクは1投与者/6.7百万doses,1接触者/5百万doses。

上記いずれの算定方式でも,直接ポリオ生ワクチンによる麻痺発生のリスクは非常に小さい。

結論として,生ポリオワクチンは最も安全なワクチンといえる。重要なのは麻痺発生例があり得ることで,これはワクチンプログラム中にサーベイランスシステムが包含される必要を示す。疫学と検査室的手段によってワクチンの有効性と安全性が継続的に確認されなければならない。

投与を受けた子の親に接触例が多いので,親は子と共にワクチンを受けるべきである。

(Bulletin of WHO,61,1982・WHO,WER,57,45,345)



Table 1. Cases of persisting spinal paralysis by category of contact, and by country. 1970-1979





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