HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.4 (1983/1[035])

<特集>
インフルエンザ


 インフルエンザ様疾患発生状況 厚生省保健情報課「インフルエンザ様疾患発生報告」によると12月24日現在,集発報告は15県,累計患者数1414名で,昨年同期を大幅に下まわっている。

 ウイルス分離状況 今季ウイルス分離は上記報告によれば,A香港(H3N2)型が横浜市(9月25日),広島(12月1日),宮城(12月7日)において,また,Aソ連(H1N1)型が鹿児島(12月23日)から報告されている。

 最近の日本のインフルエンザは2つ以上の型が混在して流行するのが特徴で(図1),前シーズンではB型の大きな流行の終息後,A香港型が長びいて6月まで検出された。世界各地のウイルス分離状況もほぼ同様で,前季世界のインフルエンザは低調で,地域的に差があるものの,全体としては分離数が,B型,A香港型,Aソ連型の順であった。しかし,夏以降はほとんどがA香港型である。

 分離株の抗原性 現在まで,世界でもめだった変異株は出現していない。今季の横浜市の分離株は前季主として流行したA/京都/C−1/81(H3N2)と同型である。この株はこれ以前の流行株とは抗原的にずれがみられている。

 抗体保有状況 1982年秋(ワクチン接種前)の抗体調査が厚生省流行予測事業で実施されている。現在までに報告されたのは群馬県のみであるが,この成績(図2)についてみると,もう1つの前季流行バリアント株であるA/新潟/102/81(H3N2)に対して抗体保有率が全年齢で低くなっている。1981年までの調査ではA香港株に対する免疫度は非常に高いので,この成績は株の差と共に地域差が大きく反映している成績とみられる。

 上記調査ののち3型混合ワクチン(AH3N2としてはA/新潟/102/81)を含んだワクチンが接種されているので,現時点の免疫状況は図2よりは高まっているはずであるが,上記成績を総合し,とくに大きい抗原変異株が出現しない限り,今季インフルエンザ流行はA香港型とみられている。



図1.インフルエンザウイルス分離数(1977年〜1982年)
表1.年齢別インフルエンザウイルス検出状況(1981年7月〜1982年6月)
図2.1982年流行予測事業速報 インフルエンザHI抗体保有状況





前へ 次へ
copyright
IASR