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全国的な恙虫病患者発生の中で,昨年11月頃から,県南部の房総地方,殊に太平洋岸に面した夷隅郡岬町から南端の館山市にかけて,現在(昭和58年2月10日)16名の患者発生をみている(表1,図1)。
県内のこれまでの患者発生の状況は,昭和21年1名,48年1名のわずか2名の届出があったにすぎない。ただ,房総地方では,かなり以前より二十日熱と呼ばれ,七島熱系の恙虫病の存在があり,さらには,昭和27〜29年にかけて,当時,北研笠原四郎先生,予研北岡正見先生,伝研佐々学先生らによって,恙虫病調査が房総地方でも実施され,野鼠からのリケッチアも確認された経緯もあり,また,地元開業医の口述の中に潜在患者の存在もみられ,そのまま,今日の患者発生へと進展したことと思われる。
今シーズン確認された患者は,いずれも成人で,20才以下に患者が認められない。2,3の高齢者を除けば,いずれも有毒地と思われる山間部や,自宅付近の山の造成地へ立ち入っており,刺し口も12/16(75%)と高率に発見され,発疹,発熱は100%,リンパ節腫脹は8/12(66.7%)に認められている。患者の血清学的診断は,秋田大学須藤恒久教授へ依頼,表2のごとき成績を得ており,10の例を除き,ことごとく抗体の上昇を認めている。
(多大なご尽力をいただいた秋田大学微生物学教室須藤恒久先生はじめ教室の方々に深謝いたします。)
千葉県衛生研究所疫学 市村 博
図1.千葉県におけるつつが虫病患者の発生状況
表1.患者の行動及び臨床症状
表2.つつが虫病患者・免疫ペルオキシダーゼ反応抗体価
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