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Vol.4 (1983/3[037])

<国内情報>
溶連菌の血清型別分布 1981年4月〜1982年3月(神奈川県衛生研究所研究報告12(1982)より転載)


 これまでA群溶連菌の血清型別成績だけを集計してきたが,本年度からA群以外のB,C,G群などの検出状況も把握したいとの判断から,A群とそれ以外の群についても集計に加えた。

 表1に,御協力願っている5機関からの連鎖球菌血清型別分布を示した。この表でわかるようにB群が全体の40.0%(266/665)を占め,A群の53.5%に次いで主要な群となっていた。A群(356株)の内訳をみると,T12(64.6%),T4(8.1%),T28(4.2%),T1(3.7%)の順に多く型別された。

 今回の成績でB群が全体の40%と多かった理由は,倉敷中央病院の73.9%(266/360)や横浜市民病院の43.9%(50/114)などの成績が影響していると思われる。

 1980年度に検出され,1981年度に検出されなかったA群溶連菌の血清型は,T5,T9,T23,imp.19型の4つである。

 次に,前述の5機関の成績から,診断名(あるいは疾患名)と血清型との関連をみるために表2をまとめた。A群の主要血清型のT12型は,猩紅熱で検出された菌株数の81.6%(124/152)を占め,猩紅熱に最も深くかかわっていた。さらにT12型は,扁桃(咽頭)炎,あるいは溶連菌感染症とも深くかかわっていた。

 A群以外のB群は,尿路感染症や膣炎などに関連するような成績が得られた。倉敷中央病院におけるB群と診断名の関係がはっきりすれば,なお興味ある結果が得られたと思われるので,次年度の成績を期待したい。

 表3に神奈川県のサーベイランス事業による定点医療機関の成績を示した。この表をみると,検出したA群,394株の血清型は,T1型が31.2%と一番多く,24.1%のT12型を上まわっていた。以下,T5(11.4%),T4,T13(各8.1%),T28(4.8%)の順に多く型別された。これらを地域別にみると,県北地区ではT1型が,湘南地区ではT12型が多かった。

 表2は疾病との関連で検出された連鎖球菌の成績であるが,これらのバックグラウンドの成績として,神奈川県内の学童621名の保菌者検索の結果を,表3の下段に示した。この表から増菌法による保菌率40.9%(254/621)が読み取れるが,この保菌率は,昨年度の35.8%を上まわっていた。

 このA群溶連菌の血清型をみると,A群209株に対して,T12型が27.8%,T13型が16.3%であり,以下T1,T5型(各14.8%)の順に多くみられた。

 これらA群溶連菌を地域的にみると,湘南地区ではT13,T12型が,県中央地区ではT12,T4,T1型で,県北地区でT5,T1,T28型が,足柄上地区でT12型が,それぞれ多くみられた。

 表1でB群が多く検出されていることがわかったが,保菌者検索でもB群が多く,検出菌全体の12.2%(31/250)にものぼっていた。



細菌病理部・WHO国内連鎖球菌
リファレンス・センター 中塚 繁・滝沢 金次郎


表1.検出連鎖球菌血清型別分布(機関別)(1981.4〜1982.3)
表2.疾病別血清型別分布頻度(1981.4〜1982.3)
表3.神奈川県サーベイランス事業で検出した連鎖球菌の血清型別分布





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