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Vol.4 (1983/5[039])

<外国情報>
1983〜1984流行季インフルエンザワクチンのための推奨株 


1982年10月〜1983年2月のインフルエンザ

 このシーズンのインフルエンザの動きは低調で,大部分A(H3N2)ウイルスであった。しかしヨーロッパ,北米の流行は前年より大きく,アジアでもこの型が散発あるいは流行した。この型の分離報告は1982年10月初めから5大陸すべてから得られている。A(H1N1)ウイルスは散発および学校流行がブルガリア,香港,日本,ニュージーランド,ノルウエイ,ポルトガル,シンガポール,スペイン,スイス,USSR,UK,USAから報告された。Bウイルスの分離は最も少なく,学校流行がタイ,アルバニア,UKから,散発例が西ドイツ,フランス,香港,インドネシア,ノルウエイ,スペイン,スイス,USSR,UK,USAで報告された。



最近の分離株の抗原分析

B型ウイルス:アメリカ,アジア,ヨーロッパの分離株はB/Singapore/333/79型。

A(H1N1)ウイルス:大部分はA/Brazil/11/78型,しかしA/England/222/80に最も近い。A(H3N2)ウイルス:各地の分離株はHI試験で抗原的にヘテロで表1の4株およびA/Bangkok/2/79に類似したウイルスが得られている。この中で,A/Belgium/2/81型が全分離数の75%で,A/Texas/1/77およびA/Bangkok/1/79の抗血清に対し,同程度によく反応した。A/Philippines/2/82型は約20%で,上記抗血清との反応は低く抗原性が異っている。しかしこの株に対する抗血清は他の株と広く反応した。

 A/Philippines/2/82型が後半増加し,この流行が1982年7〜8月オーストラリアで,北半球ではベルギー,中国,香港,イタリア,日本,オランダ,タイ,UK,USAで発生した。



血清調査

1982年後半に集めたUKおよびUSAのヒト血清においてA/Bangkok/1/79(H3N2)およびA/Belgium/2/81に対するHI抗体はすべての年令で45〜50%検出された。しかし,A/Philippines/2/82に対しては子供は1/3,成人では15〜30%の検出率である。A(H1N1)ウイルスについての数国の調査によれば,この型は,1977年以来すべての年令に感染しているが,25才以上の顕性流行はまれにしかおきない。B/Singapore/222/79ではsingle-radial-haemolysisとエーテル処理ウイルスを用いたHIが抗体調査に利用され,2/3が陽性であった。



不活化ワクチンの研究

 A/Bangkok/1/79(H3N2),A/Brazil/11/78(H1N1),B/Singapore/222/79のcompornent抗原をそれぞれ10〜15μg含むワクチンの1回投与後の抗体調査がUKとUSAで実施された。投与後のHI抗体価は最近のワクチン株よりも流行株A/Philippines/2/82に対しては低く,接種前抗体陰性の子供は前者に対し86%,後者に対し58%で,18〜22才でも同様の結果であった。年長者の多くは過去にワクチン接種を受けており,ワクチン接種後,A/Bangkok/7/79およびA/Philippines/2/82に対し≧40がそれぞれ2/3と10%(接種前は11%と2%)であった。A(H1N1)ワクチンについては70〜100%がワクチン接種後,A/England/333/80とワクチン株の両方に対し1≧20の抗体を示した。



ワクチン推奨株

 A(H3N2)ウイルスについては検出数が増加しつつあるA/Philippines/2/82型に対する抗体保有が低いのでこれが推奨される。A(H1N1)はかわってはいるものの前回のA/Brazil/11/78型株が流行株に対しても十分な抗体産生を示すので変更の指示はしない。Bウイルスも同様である。したがって,次シーズンワクチン用推奨株は次の通りである。

 A/Philippines/2/82(H3N2)型株

 A/Brazil/11/78(H1N1)型株

 B/Singapore/222/79型株

 大部分の人は最近インフルエンザに感染しているとみられるので,小児を除き1回接種で十分と考えられる。未感染の小児および過去4年間に3価ワクチンを受けていない者は2回,少なくとも4週間隔で接種すべきである。

(WHO,WER,No.8,53,1983)



Table 1. Haemagglutination-Inhibition Reactions of Influenza A(H3N2) Viruses
Table 1. Haemagglutination-Inhibition Reactions of Influenza A(H3N2) Viruses





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