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Vol.4 (1983/6[040])

<特集>
麻しん


 感染症サーベイランス情報の麻しん様疾患患者の発生報告数は,全国集計でみると季節的に大きなピークはみられない。1982年の一定点当たり患者発生報告数(年間)を水痘患者の発生報告数(毎年の発生数が比較的一定しているとみられる)と対比すると,麻しん様疾患は明らかに少なく,水痘105.4に対し,24.0(22.8%)である(図1)。

 これは1978年10月より開始された麻疹生ワクチンの定期接種の効果が反映したものとみられる。保健所運営報告(厚生省大臣官房統計情報部)によれば,年間の麻疹ワクチン接種者数は全国合計で1980年101.2万人,1981年106.2万人である。

 都道府県・政令市別の患者発生状況は全国的にみた場合と大きく様相が異なり,1982年における一定点当たり患者数(年間)は,最高の富山県で96.1(対水痘患者比68%),最低の山形県で1.5(同1%)で大きな地域差がみられる。

 厚生省流行予測事業において1982年秋に麻疹抗体調査が実施されている5県について,県別に抗体保有状況と患者発生状況を図4で比較してみた。1982年に流行のあった栃木,熊本では抗体陽性者のうち,ワクチン接種者の割合が少ないのに対し,流行のなかった大阪では接種者の割合が多い。しかし,同じく流行のなかった新潟では全体にどの年令群も抗体保有率が低い。このような各県の異なった状況が今後の流行にどう反映するか,患者発生状況の動向が注目される。

 ワクチン接種歴別にみた年齢別抗体陽性率は,0〜5歳でワクチン接種者と非接種者に明らかに差がみられ,現行のワクチンがよく効いていることを示している(図3および19ページの表)。各年齢の抗体陽性率は0〜1歳では低く,16〜19%であるが,2歳57%,3歳82%と急増する。これは,現在,定期接種の年齢は18〜36月が望ましいとされているが,2歳未満に接種を受けるものが少なく大部分は2歳以上で接種をうけていること,および,この年齢に患者発生が多い(図2)ことを説明している。図4に示したようにまだどの県も2歳以下の抗体保有率が低いので,麻疹の流行阻止のためには1歳半〜2歳にワクチン接種の普及が望まれる。



図1.麻しん様疾患・水痘患者発生状況(全国)
図2.麻しん様疾患患者発生状況年齢群別割合(%)感染症サーベイランス情報
図3.年齢別麻しん抗体保有状況(1982年秋流行予測調査)
表.年齢別麻しん抗体保有状況(1982年秋流行予測調査)
図4.年齢別麻しんHI抗体保有状況(1982年秋流行予測調査)と麻しん様患者発生状況(感染症サーベイランス情報)





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