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Vol.4 (1983/6[040])

<外国情報>
肝炎サーベイランス;デルタ因子−ベネズエラ


 1979年9月から1981年6月に西部ベネズエラのYucpa Indiansの重症肝炎流行で144症例中30名が死亡した。流行は3集団で発生,他の村ではエンデミックで,患者の大部分は子供か25才以上の成人であった。11例の剖検で死因は劇症肝炎(55%),合併症を伴った急性肝炎(18%)および肝機能不全慢性肝炎(27%)であった。

 血清学的調査はHBを示唆したが,エンデミック地域では重症例はなかった。1年後の調査で流行時罹患者35名中80%はHBVマーカー陽性であった。同じ村で発症しなかった者は1.5%がHBsAg陽性,86%はHBVマーカー陽性であった。対照集団では平均7%がHBsAg陽性,68%がHBVマーカー陽性だった。

 デルタ因子に対する血清抗体調査でこの抗体陽性者は発症者26名中17名(65%)であるのに対し,HBsAg陽性だが発症しなかった者においては25名中1名(4%)にすぎなかった。この重症肝炎流行は明らかに,HBウイルスに広範に汚染している集団中のHBsAgキャリヤーのデルタ因子感染によるものとみられる。

 〔註〕デルタ因子は直径35〜37nmの粒子で,きわめて小さいRNA分子とデルタ抗原より成る内部成分がHBsAgで包まれている。動物実験では,デルタ抗原の合成はHBV感染に依存するが,これとは別のものである。デルタ因子はHBV感染がある肝炎の場合のみ,急性および慢性肝炎に関連している。デルタ関連肝炎は一般にこの因子の関与がない場合より重症である。感染は汚染血液または血液製剤で伝達される。デルタ因子感染の鋭敏な検査法として,ラジオイムノアッセイ,ELISA,および蛍光抗体法が開発されている。抗原は感染肝細胞核中に潜伏期後期および急性期早期に検出される。デルタ抗体の産生は抗HBeのそれと類似し,急性の回復性デルタ関連肝炎では抗体値は低く一時的であるが,慢性感染ではしばしば高力価を示す。デルタ因子は世界中に分布するとみられる。高度にエンデミックなイタリア南部で疫学的に重要であるという報告がある。

(WHO,WER,58,No.17,131,1983)






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