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感染症サーベイランス情報の百日せき様疾患患者発生報告数は,全国集計でみると,4〜5月と8〜9月に小さいピークがみられる(図1)。図3に地区別に1982年の一定点当たり患者発生数(月別)を示した。九州・沖縄地区が年間を通じて多く,特に4〜5月に大きなピークがみられる。逆に北海道,関東甲信越は年間を通じて少なかった。都道府県・政令市別(図4)では,最高は岡山県(66.3)で,以下大分県(58.3),宮崎県(40.2),沖縄県(31.5),熊本県(25.9)と九州・沖縄地区が続き,最低は山梨県(1.4),新潟県(2.4)で各県ごとに大きな差がみられる。
1982年より医療機関で検出された病原細菌について情報を収集している33県・市営研のうち,現在までに12県・市より百日咳菌の分離が報告されている。月別にみると年間を通じて散発例は各地から報告されているが,全報告数の2/3は岡山における分離数である(表1)。これは岡山県で百日咳サーベイランスおよび菌の分離が熱心に行われていることによるが,さらに岡山県は百日せきワクチンの接種再開が最も遅れた地域であり,この菌分離状況は,高い患者発生数を裏付けるとともに,現在なおこの地域で百日咳菌が活発に活動していることを示すものとみなされる。
厚生省流行予測事業において1982年秋に調査された百日咳菌凝集素保有状況(図5)では,多くの子供が1〜4歳間に凝集抗体を獲得していることを示している。ワクチン接種歴別にみると,T期2回以上を接種した者の凝集抗体保有率は2才でも高いのに対し,非接種者およびT期1回のみ接種者では1〜4歳間で著明に保有率が上昇するが,これは自然感染によるものとみられる。
患者の年齢(図2)は1歳が最も多く,2歳以下が80%を占めており,2歳以下のワクチン接種の必要性が示されている。
図1.百日せき様疾患患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
図2.百日せき様疾患患者年齢群別割合(%)1982年(感染症サーベイランス情報)
表1.百日咳菌月別分離報告数(1982年1月〜1983年5月)
図3.ブロック別百日せき様疾患患者発生状況1982年(感染症サーベイランス情報)
図4.百日咳県別年間発生状況(1982年)
図5.年齢別百日咳菌凝集素保有状況(1982年秋流行予測調査)
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