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Vol.4 (1983/7[041])

<国内情報>
熊本県における新型ツツガムシ病について


 熊本県では,昭和56年11月に初めて新型ツツガムシ病患者が発生し,現在(58年6月)まで9名届出られている。内訳は56年秋〜冬5名(県南部),57年春2名,冬1名,58年春1名(県中部,阿蘇外輪山の裾野)である。すべての患者に刺し口,発熱,発疹がみられ,リンパ腺腫脹と頭痛が大部分の患者にみられた。いずれも農作業,山歩きなど感染の機会があったが,1名だけは山に行った人が持ち帰ったムシに刺されたのではないかと考えられた。患者血清はできるだけペアにして蛍光抗体間接法でIgG,IgM抗体価を測定した結果,よく上昇した。57年春から,マウスを使用して患者血餅からのリケッチア分離を試みた。血餅をSPG液でもとの血液量にしてddy系,オス,15gのマウスに腹腔内接種した。57年冬,58年春のそれぞれの患者から初代でリケッチアが分離され,前者は川村,村田両博士によりリケッチアツツガムシKarp株と同定された。後者は未同定である。57年冬の患者が立入った山林で捕獲したアカネズミ4匹の脾臓からリケッチア分離を試みた結果,2匹からそれぞれ2代目と3代目でリケッチアが分離された。この2株の同定はまだ行っていない。これら4匹の野鼠に付着していたツツガムシ幼虫のうち約10%は新型ツツガムシ病を媒介するといわれているフトゲツツガムシであった。患者及び野鼠から分離されたリケッチアはマウスを致死せしめる強毒株であった。

 57年春に患者発生のあった地域で,58年4月初めに生捕りにした野鼠20匹中,19匹の血中抗体価を調べた結果,9匹が20倍以上であった(蛍光抗体間接法,Kato株使用)。20匹の脾臓からリケッチア分離を試みているが,マウス3代目までに5株分離されている。これらの野鼠に付着していたツツガムシ幼虫の中にフトゲツツガムシも確認されている。

 (分離リケッチアの同定をしていただきました川村,村田両博士に深謝いたします。)



熊本県衛生公害研究所 甲木 和子,坂井 末男,渡辺 邦昭
熊本女子大学 西田 浪子,太田原 幸人





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