|
昭和57年に鹿児島県内で発生したつつが虫病患者は247名に達し,全国の半数を占めている。その多発時期は10月,11月,12月の3ヶ月に集中し,とりわけ11月には146名(59.1%)の発生があり,このピークは特徴的である(図1)。そのあと,1月に4名,2,3月は患者数0である。また,4月から9月にかけての春夏の患者数は毎月3名前後あり,この時期における患者発生は注目されるところであるが,これらはつつが虫病の主な症状がそろっているにもかかわらず,間接蛍光抗体法で12名中3名に抗体陽性者がみられただけである(表1)。
このように多発するつつが虫病の発生地域は鹿児島県全域に拡がっている。ただしこの分布をみると,平野部ではあまり発生がなく,むしろ山岳部での発生が多いように思われる(図2)。一方,ツツガムシの生息は,患者多発地区(主に鹿屋市周辺)ではタテ,フトゲが多く,これに対して,少数発生地区(大口市周辺)や未発生地区(こしき島)では,フジ,キタサトなどが大半を占めている(表2)。
刺口は,腹部,大腿部,胸部に多く発見され,体の柔かい部分や皮膚のなめらかな場所を好んで刺すようである(図3)。
以上が鹿児島県におけるつつが虫病の大まかな紹介であるが,昔から,大隅地方(鹿屋市方面)では「大隅熱」とか「秋疫」などと呼ばれる熱性疾患があり恐れられていたが,これが今でいうつつが虫病ではなかったかとする者も多い。
鹿児島県衛生研究所 平川 浩資
図1.月別患者発生数
表1.春夏季のつつが虫病
図2.県内のつつが虫病患者発生地区(昭和57年)
表2.ツツガ虫の生息状況
図3.刺口部位
|