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5年間に3ヶ所のトキソプラズマレファレンスラボラトリーから伝染病サーベイランスセンター(CDSC)へ3303例の血清学的陽性トキソプラズマ症が報告された。
臨床症状が報告された3067例では主徴はブドウ膜炎など眼症状(62%)とリンパ節症状(27%)で,これ以外は少なく,黄疸,肝炎,胸および声帯の小瘤,脳炎,発疹などであった。
年令分布をみると,上記症状は15才以下は少なく,15〜24才で著明に増加した。35才以上ではリンパ節炎は少ないが,ブドウ膜炎が多い。
抗体価は,急性例およびリンパ節炎では,平均2048×(128〜128000)という高い色素価を示したが,眼症状例は128×が最も多く一般住民にみられる抗体分布であった。HAは1979年以降広く利用されるようになり,この成績は色素試験成績よりふつうは低めにでるが,眼症状の例では同程度か高くなる。
リンパ節炎と眼症状はトキソプラズマ症の臨床症状の両端で,前者は感染の初期症状,ブドウ膜炎は古いかまたは先天性感染の表現とみなされている。明らかな視力低下がおこらなければブドウ膜炎は気付かないかもしれない。
リンパ節炎とブドウ膜炎の年令による攻撃率の差は多分,眼症状がおそくでることおよび遅れて認識されることの両方を反映している。抗体価の差も同様で,リンパ節炎では実際に抗体価は上昇するが,眼症状が認められる頃までに抗体価は平衡レベルに低下しているのだろう。HAは色素試験価にくらべ遅れて上昇する(図2)ので,発病後数ヶ月後ではHA価があがり,眼症状例でHAの方が色素価より高い傾向となると考えられる。
トキソプラズマ症ではヒトへの感染経路は2つあげられている。若いネコの糞便の嚢胞によるものと,生か半煮え肉の摂取による経路である。ネコを考えると,接触頻度の高い幼児に高攻撃率があるはずだが,本調査では感染は多く10代後期および20才代である。この結果は社会習慣や性的行動の変化との関連を示唆するものかもしれない。この感染がヒトの分泌物,涙,唾液,尿または汚染された水を介して伝染するという報告もあり,英国のトキソプラズマ感染像にもこれらの媒介物が働いているかもしれない。
(CDR,83/06,3)
図
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