HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.4 (1983/12[046])

<外国情報>
がらがらへびの粉末と関係したArizona hinshawiiによる敗血症−カリフォルニア


 1982年11月,61才になるスペイン系の婦人が,切除不能の原発性胆のう癌のため症状緩和を目的とした化学療法をうけていたところ,腹部不快感と悪寒,そして39.4℃の発熱をきたして入院した。入院時,白血球数は264/mm2で,血液培養によってA.hinshawiiを分離した。

 最初の問診によっては特に感染源ははっきりしなかった。しかし,がらがらへびの粉末カプセルを服用した癌患者におけるA.hinshawiiによる重症感染の文献を読んだ彼女の主治医は,こうした事実について調査したところ,患者の娘が処方薬以外に同様の民間薬を毎日母親に与えていたことが判明した。そのカプセルのひとつを培養したところ,E.coliE.cloacae,腸球菌,Salmonella phenix,Stapylococcus epidermidisそしてA.hinshawiiが分離された。アンピシリン投与後,患者の白血球数は正常値に戻り,培養も陰性になった。しかし,発熱は持続したので,クロラムフェニコール投与にきりかえたところ,患者は症状改善し退院した。

 オークランドにおける州ならびに連邦政府の食品・薬品管理当局の協力調査が開始され,薬草や薬品の小売店で問題のカプセルを売るところを探索し,販売禁止とがらがらへび粉末を押収した。回収された粉末からは,S.newport,S.poona,S.anatum,そしてA.hinshawiiのいくつかの血清型が分離された。こうした民間薬を売っている輸入業者がロサンゼルスで2店判明し,今後は輸入しないことが合意されたが,メキシコにおける販売元はわかっていない。

 編集部註:Arizona hinshawiiは腸内細菌科のグラム陰性菌で,抗原的に,臨床的に,そして疫学的にもSalmonellaと類似している。1939年にアリゾナ州で病気にかかっている爬虫類からはじめて分離され,当初は“ArizonaからのS.dares-saalam変異株”と呼ばれた。その後はSalmonellaとは区別されたが,1983年7月1日現在では,CDCはあらためてSalmonella属に再分類した(Salmonella V arizonaeが現在ではむしろ一般名である:訳者)。爬虫類がいまでも主たる保有動物であって,人や鳥,そして他の動物も時として感染する。癌患者のように免疫機構のおちている個体では重症となりうる例である。

(CDC,MMWR,32,No.35,464,1983)






前へ 次へ
copyright
IASR