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昨年5月から10月にかけ,静岡県焼津市でエコー24(E24)による無菌性髄膜炎が多発した。図1は無菌性髄膜炎と診断され,焼津市立総合病院に入院した患者の月別発生数である。5月を初発に10月までの6ヶ月間に58名の患者が入院した。患者の年齢は0歳から14歳までに分布し,1歳未満9名,1〜4歳7名,5〜9歳17名,10〜14歳24名と,比較的年長の小児に多い点が注目された。これら58名のうち28名についてHeLa細胞を用いてウイルス分離を行ったところ,17名(60.7%)よりE24を22株(便:16株,髄液:6株)分離した。
一方,神奈川県においては,昨年7月頃までエコー30を主病原とした無菌性髄膜炎が続いていたが,8月からはE24が出現,以後E24を主体とした発生へといれかわった。
今回の流行株はMKおよびVero細胞での分離率は極めて悪い反面,HeLa細胞では効率よく分離できた。また,E24標準株に対する抗血清(市販)50単位でほとんどの株は中和同定されたが,交差中和試験の結果から,流行株は標準株に比べて抗原変異していることが示唆された。
WHOレポートによれば,髄膜炎からのE24分離報告はめずらしいものではない。しかし,国内での報告は昨年,静岡をはじめ神奈川,愛知,富山の各県でなされるまで1例もなく(上気道炎からは1978年,石川県で1株分離されている),また,焼津市でみられたような大流行は初めてのケースと思われる。E24が今後どのような流行を起こすかは予測し難いが,神奈川県においては,住民の抗体保有率(図2)は極めて低く,特に30歳未満では流行株に対してわずか1.7%(119名中2名)保有しているのみであり,流行の地盤は整っていると考えられる。
神奈川県衛生研究所 鈴木 利寿,山田 和美
焼津市立総合病院 山中 龍宏
聖ヨゼフ病院 高宮 篤
図1.無菌性髄膜炎による月別入院患者数(静岡県焼津市立総合病院小児科)
図2.神奈川県住民のECHO24に対する中和抗体保有状況(1983年4月〜8月に採血:4倍スクリーニング)
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