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愛知県では昭和59年7月から9月にわたって,主に無菌性髄膜炎患者からエコー20型ウイルスがぼつぼつ分離された。このウイルスは当県では初めてのものであり,また,国内の分離報告もわずかであるので,その分離成績などについて報告する。
当県の感染症サーベイランス事業の検査定点は6ヶ所(東三河1,西三河2,尾張3)であるが大半の検体は豊橋市民病院(東三河),西尾市民病院(西三河),一宮市民病院(尾張)の3ヶ所の小児科由来のもので,さらに,この3病院からの検体数はかなり隔たりがあった。
エコー20型ウイルスの分離状況(9月発病まで)は,表に示すように第1例は7月9日発病で,東三河の乳児嘔吐下痢症患者,第2例は同じ地域の無菌性髄膜炎患者,以後は無菌性髄膜炎6例,突発生発疹1例,合計9例から分離されている。分離地域は東三河8名,尾張1名であった。
分離された検体は1例を除き,3病日以内に採取されたもので,各種検体からのウイルス分離をみると,糞便は8検体中全例に,咽頭ぬぐい液は8検体中5例,髄液は4検体すべてが陰性であった。
分離にはHeLa,MK,HEL,RD−18S細胞を用いたが,分離率の最もよかったのはRD−18Sで20検体中13検体から分離し,特に2株はこの細胞でのみ分離された。HELでは20検体中11検体,MKは7検体から分離されたが,HeLaはわずか1検体の分離であった。
分離ウイルスの同定は分離当所,予研においてプールされたエンテロプール血清では同定できなかったので,シュミットのプール血清によって同定した。その後は単味のエコー20型抗血清を用いた。ウイルスは20単位の抗血清で容易に中和された。
昭和59年7月から9月にかけて,エコー20型ウイルスを9名から分離したが,血中抗体の調査も未実施であり,また,地域の検体数にも差があり,分離株数も少なく,これだけの成績ではエコー20型ウイルスの疫学などについて言及することはできない。
愛知県衛生研究所 石原佑弌,栄 賢司,佐々木珠美,西尾 治,鷲見順子,井上裕正
患者からのエコー20型ウイルス分離状況
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