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Salmonellaの血清型はいまや1600種以上に及ぶ。Kauffmann-Whiteの様式でSalmonellaを血清型に分けることが承認された1930年代のころ,だれが現在のSalmonellaの多様性を予測したであろうか。おそらく,Kauffmann自身さえも今日のような血清型数にまで進展するとは思いも及ばなかったであろう。事実,いまやKauffmann-White schemaをそのまま単に血清型を追加していくだけでは,多少の無理と矛盾ができている。たとえば
・O−血清群をA,B,C,D,Eなどのアルファベットで呼んだが,もはやその数は26をはるかに越え,O66血清群にまで達している。
・O抗原のあるものはバクテリオファージによって介達されることが明らかとなり,そのようなO抗原の有無でO血清群を区別しても無意味である。
・血清型に固有名詞をつけるのはSalmonella(およびLeptospira)のみで,これは他の微生物には例をみないことである。このために,1956年以来亜属(現在の亜種)I以外は抗原構造をもって血清型名とすることになったが,それ以前に固有名のつけられたものはそのまま残され,亜属Iとまちがえられやすい。
などがその例である。このために,1983年のKauffmann-White schema(1984年12月発表)でO血清群の呼称の変更と,一部の血清型名の削除が行われた。その大要は次のとおりである。
1)O血清群の削除
a)C4群(O6,7,14)を削除し,C1群(O6,7)に併合させる。
b)C3群(O8またはO8,20)を除き,C2群(O6,8)に併合させる。
c)E2群(O3,15)およびE3群(O3,15,34)を削除し,E1群(O3,10)に併合させる。
d)G2群(O13,23)を削除し,G1群(O13,22)に併合させる。
e)H2群(O6,14,25)を削除し,H1群(O6,14,24)に併合させる。
2)O血清群の呼称の変更
アルファベットで符号づけていたO血清群の呼称を表1のように変える。
3)血清型名の削除
一部のO血清群の削除と併合および亜種
“Choleraesuis”亜属T)以外の血清型固有名の削除によって,約200種の血清型名が血清型リストから除かれる。したがって,たとえば3,10:e,h:1,6,3,15:e,h:1,6,3,15,34:e,h:1,6 の血清型は,いままではそれぞれS. anatum, S. newington, S. minneapolisとして記載されたが,今後はこれらはすべてS. anatumとして記録されることになる。また,わが国には食鳥および鶏肉に多い亜種“Salamae”亜属U)のS. sofiaは,今後は固有名をつけることなく,S.4,12:b:−(2)またはS. U4,12:b:−と記載することになる。なお,問題の多かったS. javaは今回の表からは除かれ,S. paratyphi Bに含まれている。
Kauffmann-White schemaの変更にともない,市販のサルモネラ診断用O血清の名称と組合わせにも変更があるはずで,たとえばA群血清はO2群血清,C1とC4血清は混合されてO7群血清,C2とC3群血清は混合されてO8群血清,E1群,E2群およびE3群血清は混合されてO3,10群血清,E4群血清はO1,3,19群血清となるであろう。,
なお,疑問の点があれば日本サルモネラセンター(国立予防衛生研究所,細菌部第一室)に照会されたい。
国立予防衛生研究所 坂崎利一
表1.O血清群名の変更
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