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Vol.6 (1985/4[062])

<外国情報>
AIDS−1984年までのヨーロッパの状況に関する報告,WHO AIDS協力センター,パリ


1984年12月31日までにヨーロッパ14ヶ国から762例が報告された(表1)。1984年中に417例が診断され,1983年までのほぼ2倍となった。最近2ヶ月の新報告は125でこれは週あたり11例にあたる。

人口10万対発生率の最高はベルギーとデンマーク(6.6)である。ベルギーの85%(54/65)はアフリカ人でそのうち発症前にベルギーに居住したのは18名のみである。対照的に,デンマークではアフリカ人またはカリブ人の例は報告されていない。

762例中376が死亡(致死率49%)。64%が1種以上の日和見感染をもち,20%がカポジ肉腫単独,16%がカポジ肉腫と日和見感染,「その他」は進行性多発性白脳炎3例と脳リンパ腫3例。致死率は「その他」群で67%,カポジ肉腫を伴う日和見感染で60%,日和見感染のみで55%,カポジ肉腫単独で24%。

男女比では男が92%。年齢については,20〜29歳18%,30〜39歳46%,40〜49歳26%,50〜59歳6%,60歳以上0.9%,不明1%。低年齢では0歳が5名おり,内訳は男児でブルンジ人,ベルギーで診断されたザイール人,ハイチ人,フランスで診断されたザイール人,女児では父親がザイール人のフランス人,10〜14歳は2名でいずれもフランスの血友病患者。15〜19歳群は4名で,血友病2,同性愛1および特定不能1。

地理的分布では,ヨーロッパ人605(80%),カリブ人24(3%),アフリカ人111(15%),その他22(3%)。

合計762中同性愛または両性愛者71%,静注常用者1.4%,血友病2.6%,輸血1.0%,同性愛で静注常用者1.4%,リスク要素なし男14.7%,女6.3%,不明2%。

診断日(検査でCDC定義陽性確定日)から1年以内に61%,3年以内に83%が死亡した。

AIDS患者発生数は国ごとの相異を考慮し,また人口と対比してはじめて意味があるが,単純にみて3通りの傾向がみとめられる。デンマーク,フランス,西ドイツ,オランダ,スイス,英国の6ヶ国は着実に増加傾向を示している。ベルギーは異常で,1981,82年は一定だったが83年に増加し,84年に減少した。これは83年にアフリカ人患者が主にザイールから治療のため多数入国したためとみられる。84年以降ザイールが病院を整備したので状況はかわった。ベルギーの65例の報告のうち国内発生は7のみである。オーストリア,フィンランド,ギリシャ,イタリア,ノルウェー,スペイン,スエーデンでは増加がみられない。ベルギーもアフリカ人患者を除くとこの群に近い。

(WHO,WER,60,No.12,1985)



Table 1.Total number of AIDS cases reported by 31 December 1984 in 17 European countries, and estimated rates per million popiulation





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