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Vol.6 (1985/8[066])

<外国情報>
H. influenzae type bによる敗血症予防のためのポリサッカライドワクチン−米国


ポリサッカライドワクチン(正式名Haemophilus b Polysaccharide Vaccine)が最近米国で許可された。この文の目的は,このワクチンに関する情報をまとめ,使用のガイドラインを示すことである。

H. influenzae(インフルエンザ菌)疾患:インフルエンザ菌は米国において細菌性髄膜炎の第一病因で,主に5歳以下の子供に年間12,000例発生する。致死率5%,神経後遺症が25〜35%にみられる。すべてb型(Hib,6種の莢膜型のうちの1つ)による。髄膜炎以外に他の侵入性疾患すなわち咽頭蓋炎,敗血症,蜂巣炎,関節炎,骨髄炎,心膜炎,肺炎などの原因となる。nontypeable(莢膜のない)菌はヒト気道に常在し,中耳炎や気道粘膜感染をおこしているが敗血症はめったにおこさない。髄膜炎発生率は年間子供10万対51〜77で,他の侵入性Hib疾患は10万対24〜75である。つまり米国では毎年5歳以下の1000人に1人が全身性Hib症をおこし,生後5歳までの累積リスクは1:200である。発症率は6ヶ月〜1年がピークで,約35〜40%が18ヶ月以上で,25%が24ヶ月以上でおこる。

ワクチン:ワクチンは精製莢膜ポリサッカライドから成り,これはT-cell independent 抗原で,蛋白特有のT-cell memory反応を誘起しない。

ワクチンの効果:1974年フィンランドにおける4年間の追跡調査で,18〜71ヶ月の子供では全侵入型Hib疾患に対し予防効果90%であった。18ヶ月以下の子供では無効だった。

ワクチン使用に関する勧告:最近のワクチン効果および乳幼児のHib疾患に対する危険性に関するデータはこのワクチンが効果がわかっているハイリスク者に使用されるべきであることを強く支持する。勧告は次の通りである。

1.24ヶ月の子供に接種が薦められる。持続は少なくとも1年半〜3年半期待できる。

2.18ヶ月で特にハイリスク群は接種を考えてもよいだろう。18〜23ヶ月児の効果は不確実だがこの年齢群の患者は5歳以下のそれの12%を占めるから保育所に入る子供および慢性病(鎌状赤血球症,脾摘出,免疫不全)は接種した方がよい。

3.2歳以上になると侵入性疾患の危険性は減少するが,ワクチンは安全で有効だから2〜5歳では保育所に入る子供などリスクの程度によって接種が考慮されるべきである。

4.慢性病の年長児や成人の使用にはデータ不足。

5.18ヶ月以下には薦められない。

6.DTPとHibワクチンを部位をかえて同時に接種しても免疫に支障はない。

副作用:最も安全なワクチンといえる。今まで6万dosesが乳幼児,子供に,数百dosesが成人に投与されたが,全身性重症例はアナフィラキシー反応の1例のみであった。38.5℃以上の発熱は1%以下に報告されている。フィンランドの調査ではマイルドな局所反応と発熱が約半数に24時間以内にみられたがすぐ消退した。最近の製剤はさらに反応が少なくなっている。

注意:2歳以下の子供は2次的疾患をおこしやすいが,Hibワクチンはこれを阻止するには有効ではない。ワクチンはインフルエンザ菌のnontypeable株の感染を阻止しないから,中耳炎,副鼻腔炎のような再発性上気道疾患はワクチン接種の対象とはならない。

新型ワクチン:18ヶ月以下の子供には有効性が期待される新ワクチン(Hib polysaccharide-protein conjugate vaccine)が開発中である。

(CDC,MMWR,34,No.15,1985)






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