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1985年3月,フランスからの訪英団が帰国後下痢,腹痛,嘔吐を発症した。アンケート調査の結果,訪英団のための昼食会の出席者で解答のえられた英国側30名とフランス側25名中13名が48時間以内に発症し,さらに3名がその週に胃腸に異常を認めた。接取調査では生カキが有意に関連が高かった。同じ時期にこの件とは別に同じ町でカキ関連胃腸炎がみられている。発症後数日目の4人の便材料から病原細菌は検出されなかった。電顕検査はなされなかった。
発症の状況として短い潜伏期(中間値36時間),半数は嘔吐があり,病原細菌が否定されていることがノーウォーク様ウイルスの感染と一致する。個別食品の関連率はカキを示唆するが,カキを食べた者の発症率がイギリス側11/20(55%)に対し,フランス側2/16(13%)と大きく差があることは説明できない。問題のカキは清浄化プラントで15日間措置されていた。清浄化の強化が必要だろう。(CDR,85/37,1985)
1984年12月18日,クリスマス会に出席した39人中27人,および19日に同一仕出し屋からのランチを食べた14人中5人が中間値42〜44時間の潜伏期の後胃腸炎を発症した。症状は両グループで同様で,32人中17人は重症の嘔気,頻回の嘔吐および下痢をおこし,残りの15人は比較的軽症であった。少数に頭痛,不快感,軽度の発熱があったが,これらは胃腸症状の重症度とは関連しなかった。重傷者11名の便材料中,4名に電顕で形態的にノーウォーク因子様small round structured viruses(SESV)が認められた。抗原が得られないために血清学的検査はできなかった。
調理助手の1人が当時頭痛と嘔気(下痢,嘔吐は否定)があり,20および21日に母と妹が嘔吐と下痢を発症した。
SRSVが検出されたこと,病原細菌が否定されたことおよび40時間で発症していることがウイルス性であることを支持する。状況は調理助手が感染源であることを示唆するが,嘔吐,下痢のない状況で,34人に感染させるほどウイルスを排泄するものかどうかは疑問が残る。
(CDR,85/40,1985)
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