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Vol.7 (1986/2[072])

<外国情報>
クロイツフェルト−ヤコブ(CJ)病と脳下垂体成長ホルモン


 1984年11月〜1985年4月に米国で進行性神経疾患で3名が死亡した。2名は剖検で,他の1名は典型的臨床症状でCJ病とされた。全員35歳以下で,共にヒト成長ホルモン(hGH)の定期注射を受けていた。ホルモンのバッチは同一でないが,共通点として1969年に注射を受けた。この異常に若い年齢の同時発生が注目され,NIHの専門家委員会はhGHの供給保留を勧告した。

 CJ病は1920年に初めて記載された中年の亜急性痴呆で,発病は普通50〜70歳。男女とも罹患し世界中で発生,致死率は一般の集団で年あたり100万対1である。死は発症後6〜24ヶ月後で,大脳皮質灰白質の海綿状空胞化,astrocytosisおよび小脳萎縮を示す。CJ病は病理と病因因子の類似性からヒトのクールー,羊・山羊のスクレピー,ミンクの伝染性脳症と共に海綿状変性脳症として分類されている。1968年にヒト死亡例の脳材料の脳内および静脈内接種でチンパンジーに感染が成功,潜伏期は12〜14月,感染性は−70℃に2年保存可能だった。リスザル,モルモット,その他の齧歯類,霊長類に実験的に感染可能である。

 ヒト−ヒト感染は3例報告。1例は角膜移植,2例は脳内に金属電極を挿入する操作を伴う手術に関連した。さらに,熱,低温,ホルマリン,イオン照射に対するこの因子の異常な抵抗性から,諮問委員会は患者および使用器具の安全な取り扱いと,痴呆症死亡材料のhGH製造への使用中止を勧告した。

 英国では20年にわたって,hGHがヒト脳下垂体から抽出されている。英国の死亡統計では1984年のCJ病関連死亡例48のうち40歳以下は1例で,1971〜84年に40歳以下のCJ病死亡例は19のみでこの中にhGHの使用例はない。Brownらは,米国の例は古典的hGH製剤関連例の潜伏期を経た発生のはじまりと考えている。とすれば多くの例が今後5〜10年間に起こるかもしれない。幸いなことに遺伝子工学によるhGHが治療に使用可能になりつつある。Methionyl-DNAhGHは英国および米国で1985年10月に製造許可され,脳下垂体由来hGHの使用は中止されている。以前の製剤の安全性を評価する方法と被投与者の健康追跡の方法が検討されている。

(CDR,85/49,1985)






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