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Vol.7 (1986/2[072])

<外国情報>
精神薄弱者施設におけるRSVの流行−米国


 ワシントンの精薄施設で1985年3〜4月にRSウイルス(RSV)の2流行があった。4〜85歳の496名収容の施設の最も重症な障害者を収容しているA棟(32名,平均20歳)とB棟(16名,平均19歳)に流行したもので,B棟の南翼には全棟用の診療所がある。

 A棟の初発は3月7日で,彼女は2日に鼻カタルのあった職員と旅行した。32名中16名が38℃以上の発熱,喘音または上気道症状(鼻汁,せき)などで発症,ほかに中耳炎,胃腸症状,呼吸困難,気管支肺炎などを伴った者もあり,1人は呼吸困難で入院4日目に死亡した。有症期間は2〜17日(平均9日)だった。16患者中3名は培養およびFAの両方でRSV陽性,死亡例はFAのみ陽性だった。

 B棟ではA棟の最後の患者発生の11日後から16名中8名が発症。初発患者は気管切開治療のため3月31日〜4月3日まで,RSV患者のいた病室に入院した。1例は培養およびFAで,もう1例は培養でRSV陽性だった。

 両棟とも性,基礎疾患,障害の程度などは発症に関係ないが,年齢は有症者が無症者より低く(A棟では平均5.6歳と12.7歳,B棟では11.3歳と28.4歳),また,在施設期間は有症者が無症者より短い(A棟で平均3.9年と11.1年,B棟で6.2年と19.3年)。

 RSVは全年齢で重症呼吸器疾患をおこす。2歳までにほとんどが罹患するが再感染は一生起こる。2歳以下で最も重症で,この年齢の下気道疾患の第1原因である。院内感染をおこすことがあり,RSV感染によって小児の入院期間が2倍になったという報告例がある。心臓,肺または免疫系に障害のある子供は最もハイリスク群で,心臓疾患のある者のRSV感染で37%の致死率が報告されている。保育所の流行も同様重症で,死亡することがある。年長児と成人では上気道疾患と発熱が主であるが,中耳炎,喘息患者の悪化,下気道疾患などもおこる。

 在施設期間が短いことと発症との関連の理由としては,施設内で繰り返しRSVに暴露されて感受性が低くなると説明されるかもしれない。施設内流行は一般社会の年次的RSV流行と一致する。米国では晩秋から早春の間に発生し2〜5ヶ月続く。施設に導入後は密接な接触または媒介物,スタッフが感染材料を知らずに運んだり,スタッフ自身が感染して伝播することもあろう。院内感染防止対策としては手洗の励行と上衣の着用,さらに感染者は個室または集中して収容すべきである。

(CDC,MMWR,34,No.44,1985)






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