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Vol.7 (1986/3[073])

<外国情報>
英国諸島におけるレプトスピラ感染症の噛歯類保有動物としてのカイリネズミ


 南米原産の水棲噛歯動物Myocastor coypusが,1929年に毛皮採取用に英国に輸入後脱走して野生化した。今日ではこのカイリネズミは主として東アングリアから西はライセスタシャイア,南はエセックスに広がり,穀物の根,河川堤や水路を破壊する害獣となっている。1982年,1983年に東アングリアに主としてレプトスピラ・ハージョというヒトのレプトスピラ症が増加した。職業との関連性はなく,水と東部田園に発生しているという理由でカイリネズミが保菌動物である可能性を研究することになった。カイリネズミからのレプトスピラの分離はアルゼンチン,北米およびソ連で報告されている。英国諸島では血清学的研究によってカイリネズミがレプトスピラの自然保有者であることが示唆されていた。しかし,感染しても抗体価が上らない動物もあり,レプトスピラの他の血清型と区別することも困難なので,カイリネズミから菌を分離培養し,病理組織学的および血清学的研究をすることにした。

 ウエベニ河西岸,ロウエストフト北西地域からカイリネズミ30頭をわなでとらえ,血液を集めた。年齢の推定には眼の水晶体を採取した。約0.5gの腎臓を培地10ml中にホモジェナイズし,尿0.5mlを採った。培養にはウサギ血清2%を含む分離培地に0.02%の5フロロウラシル(レプトスピラ選択剤)を加え,30℃に2ヶ月培養し,一週間おきに暗視野顕微鏡でレプトスピラの有無をみた。血清は顕微鏡凝集試験を行ってレプトスピラ抗体の存否をみた。この研究の結果,カイリネズミ30頭中7頭(24%)が80〜1280倍のレプトスピラ抗体を示した。7陽性血清中6はワイル病レプトスピラ抗体,1〜3はヘブドマディス抗体を示した。検査した30頭中2頭はレプトスピラが尿から分離され,うち1頭は腎臓からも分離された。分離菌株はヘブドマディスおよびイクテロヘモラギエ(ワイル病)の血清群であった。しかし,ヘブドマディスが培養されたカイリネズミの血清に抗体は検出されなかった。この研究によって英国諸島では外見上健康なカイリネズミからヒトに病原性のあるワイル病やヘブドマディス血清群のレプトスピラがはじめて分離確認された。特に東アングリアではカイリネズミはヒトや家畜に病原性のあるレプトスピラを保菌しており,水上スポーツをする人達に危険である。

(CDR,86/01,1986)






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