|
生後4日で先天性消化器異常と診断された男児が数ヶ月間にたびたび手術を受け,1984年2月〜85年6月まで頻回輸血を受けた。1985年5月と8月の患児の血清は共にEIA陽性,後者は吸光度>2.0,negative cut off 0.083,absorbance ratio>24,Western blotはp24とgp41に共に陽性だった。ウイルス分離は陰性。患児への供血者26人中,84年5月に供血した34歳女性が1986年1月の検査でEIAおよびWestern blot検査で強陽性だった。他の供血者はすべて陰性。
看護にあたった32歳の母親の血清はHTLV−V/LAVに対し,1985年3,6月は陰性だったが,10月の血清がEIAおよびWestern blot試験で強陽性,臨床的には正常だがT-helperとT-suppressor lymphocytesの比が0.9(普通は>1.0),ウイルス培養は−。母親は針を刺したり,傷があったりしたおぼえはないが,上衣は着けず,しばしば手に血液や排泄物がついた。母子とも他のリスク因子はなく,父は陰性。
本例は子−母感染の初めての報告である。今まで17,000のAIDS患者について家族感染は,性的パートナー,感染母子から生まれた子への感染及びリスク因子のある家族以外は報告されていない。
CDCが知る限りで看護者感染例は1例である。これは英国の報告で,44歳女性が剖検でAIDSと診断された。彼女はガーナ人のAIDS患者を家で看病し,長期間分泌物や排泄物に接触した。この間,手に傷や慢性湿疹があったことを認めている。
この例と今回の例は,まれに血液または感染性体液,排泄物の濃厚接触でウイルスが伝染することを示している。このような伝播は公表されている手引きを厳守することで防げるはずである。
(CDC,MMWR,35,No.5,1986)
|