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Vol.7 (1986/6[076])

<特集>
ヘルパンギーナ 1985


 厚生省感染症サーベイランス事業において,ヘルパンギーナの全国平均一定点当たり患者発生数は1982年59.0,1983年47.6,1984年97.5,1985年41.4で,1984年の大流行に対し,1985年は平年並みであった(図1)。また地域的にみると,1984年は一定点当たり患者発生数が50.0を上回る県市が57県市のうち52県市に及ぶ全国的な流行であったのに対し,1985年は21県市にとどまった。宮城県を例外として三重県以西の中国・九州地方で患者発生が多く,山梨県以東の関東地方が少ないという地域差がみられた(表1)。

 年齢別には0〜4歳が82%と大部分を占めた。この年齢群の割合は1982〜1984年の3年間は各年ともほとんど同率で低年齢層が流行の主体となる傾向は変わっていない(表2)。

 1985年にヘルパンギーナの症状のあったものからのウイルス検出は1986年5月までに392例が報告されている。そのうちコクサッキーA4(CA4)が153例(39%)と最も多く,このほかCA2が49例(13%),CA5が34例(9%)などがめだち,1984年の大流行の原因となったCA10は11例と少なかった(表3)。

 392例中333例は鼻咽喉から分離された(CA4が105例,CA2が45例,CA5が35例)。また,65例は便から分離され,このうちCA4は49例であった。単純ヘルペス40例はすべて鼻咽喉から分離された。

 1981〜1985年までのヘルパンギーナ患者からのウイルス検出状況を図2に示した。CA4は1982年以降毎年検出されていたが,1985年は特に増加した。

 ウイルス検出例でヘルパンギーナとともに報告された主な臨床症状は発熱,上気道炎,口内炎,発疹などである。CA群分離例では髄膜炎,脳脊髄炎は報告されなかった。1985年中のエンテロ71検出例83例中ヘルパンギーナが報告されたのは9例で,このうち6例は手足口病が同時に報告された。

 年齢が報告されたヘルパンギーナ患者390例について年齢別にウイルス検出状況をみると,検出数は1歳が106(27%)と最も多く,2歳90(23%),0歳と3歳各56(14%),4歳34(9%)で,患者発生の多かった0〜4歳からの検出数は342(88%)を占めた。CA4のこの年齢群からの検出数は134(88%)であった。



図1.一定点医療機関当たりヘルパンギーナ患者発生状況
表1.県(市)別患者発生状況(1985年)
表2.ヘルパンギーナ年齢群別患者発生状況(1985年)
表3.ヘルパンギーナのあったものの月別ウイルス検出状況(1985年)
図2.ヘルパンギーナの症状のあったものの年次別ウイルス検出状況(1981〜1985年)





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