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Vol.7 (1986/9[079])

<国内情報>
感染性腸炎研究会報告 1985年 4.外国由来腸管感染症について(2)


 外国由来腸管感染症の推定感染国についてみると,インド・ネパール・パキスタンが170株でもっとも多く,総分離株の34.3%を占め,インドネシア80株16.2%,フィリピン60株12.1%がこれに次いでいる。最近5年間のこの検出順位ではインド・ネパール・パキスタンはつねに1位であるが,インドネシアでの感染例が年ごとに増え,逆に以前は上位であった韓国が著しく減少したことがめだっている。

 分離病原体では,Shigellaがインド・ネパール・パキスタンにもっとも多く,S.typhi,S.paratyphi Aも同じくインド・ネパール・パキスタンおよびインドネシアに多い。また,V.parahaemolyticus感染はフィリピン,インドネシア,韓国に多い。この傾向は数年来同じである。この年のE.histolytica感染はアフリカからの帰国者に多かった。

 混合感染が多いのは最近の外国感染例の大きな特徴で(表1),1985年には82例で外国感染例総数の20.3%に上り,国内例の2.8%よりはるかに高率である。混合感染の多くは2種病原体であったが,最高5種類のものもあった。これらのうち,Shigellaとの組合せが61例,74.4%ともっとも多かった。この混合感染例もインド・ネパール・パキスタンに多くみられた。

 これらの外国由来の患者から分離された各種起因菌のCP,TC,KM,ABPCおよびNAの5剤に対する耐性頻度を表2に示した。国内例からの分離株と比較するとEPECを除いて一般に耐性頻度が低い傾向にあった。

 各種感染性腸炎の症状(図1)と経過(図2)を外国感染例と国内例で比較すると,一般に症状では外国感染例の方が軽く,症状の回復は外国感染例の方が遷延する傾向がみられた。これは外国感染例が健康な青壮年層の感染例が多い反面,現地で発症すると適切な治療が遅れることに一因があると考えられる。



感染性腸炎研究会参加都市立14伝染病院(市立札幌病院南ヶ丘分院,東京都立豊島病院,同駒込病院,同墨東病院,同荏原病院,川崎市立川崎病院,横浜市立万治病院,名古屋市立東市民病院,京都市立病院,大阪市立桃山病院,神戸市立中央市民病院,広島市立舟入病院,北九州市立朝日ヶ丘病院,福岡市立こども病院・感染症センター)に1985年に収容された感染性腸炎症例による。



感染性腸炎研究会(会長 斉藤 誠)
天野 冨貴子(名古屋市立東市民病院)
松原義雄(東京都立豊島病院)ほか


表1.混合感染例のうちわけ
図1.感染性腸炎の症状
図2.感染性腸炎の経過
表2.外国由来株の耐性頻度(CP,TC,KM,ABPC,NA5剤について)





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