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Vol.7 (1986/10[080])

<特集>
手足口病 1985〜86


 厚生省感染症サーベイランス事業において手足口病の週間一定点医療機関当たり患者発生数(図1)は,1985年の最盛期には5.76を示し,この年は1982年以来3年ぶりの大きな流行となった。これに対し,1986年は最近数年中最低の発生数で,平均週間患者数が0.7をこえる週がないまま9月まで推移している。

 地域的にみると,1985年の患者発生は前年に少なかった四国などにおいて多くみられた(表1)。1986年は9月まで発生は全国的にきわめて少なく,例外的に高知県が前年の全国平均程度報告しているのがめだっている。

 患者の年齢をみると,低年齢層が流行の主流を占めるのは従来と変わらないが,1985年の集計で5〜9歳(19%)がやや多い傾向を示した(表2)。

 表3および図2は手足口病症状のあったものからのウイルス検出数である。CA16は1984年の小流行に引き続いて1985年は3年ぶりに大流行し,28県市から476例の分離が報告された。これに対しEV71の前回の流行は1982〜1983年で,1984年は低調であったが,1985年に増加し,CA16と時期的に重なって77例分離され,この年の流行病因の一部を成している。1986年夏のウイルス分離については現在まだ報告が集まりつつある段階なので,今後検出数が追加されるはずであるが,CA16が全く報告されていないのに対し,EV71は検出報告が続いている。1985年が長野,愛知,青森など近畿以北が多い(ただし北九州,福岡からも報告されている)のに対し,86年は現在までのところ四国を中心に7県市から報告されている(表4)。

 手足口病症状を伴った者からはその他のエンテロウイルス,アデノウイルスなどの分離が毎年少数ではあるが報告される。このうちエンテロウイルス以外は皮膚病巣からの分離例はなく,いずれも鼻咽喉または便材料から得られているので,病原ウイルスとしての意味づけはむずかしい。

 1985年のCA16では476例中鼻咽喉から378(79.4%),便から70例,皮膚病巣からは66例(13.9%),髄液からは1例が分離された。EV71では77例中鼻咽喉から62例,便から14例,皮膚病巣から8例,CA10の3例は鼻咽喉から分離された。

 CA16とEV71が分離された年齢は,両ウイルスとも0〜4歳が80%を占め,ウイルスによる年齢差はみられない(表5)。

 1985年中に報告されたCA16,EV71,CA10の全報告中,手足口病が報告されたものは,CA16が476/536(88.8%),EV71は77/102(75.5%),CA10は3/31(9.7%)であった。また,手足口病と同時に髄膜炎が報告された例がCA16に1例,EV71に5例あった。



図1.一定点医療機関当たり手足口病患者発生状況(感染症サーベイランス情報)
表1.県(市)別患者発生状況(1985年)(一定点当たり患者発生数の多い県(市)少ない県(市)を上位10県ずつ並べた)
表2.手足口病年齢別患者発生状況(1985年)(感染症サーベイランス情報)
表3.手足口病症状のあったものからの年次別ウイルス検出状況(1981〜1986年)
表4.手足口病症状のあったものからの月別・住所地別ウイルス検出状況(1985年3月〜1986年8月)
図2.手足口病の症状のあったものからの月別ウイルス検出状況
表5.手足口病症状のあったものからの年齢別ウイルス検出状況(1985年1月〜12月)





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