HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.7 (1986/10[080])

<国内情報>
急性出血性結膜炎(AHC)からのコクサッキーA24(CA24)変異株(EH24)の分離−和歌山市


 徳島県へ合宿に行った児童とその家族の眼ぬぐい液からEH24を5株分離した。

 合宿は7月29日から8月2日までの4泊5日間で,児童50名,大人20名の計70名の参加であった。現地に着いて3日目位に急に目の異常を訴える者が現れ,その後患者が続いた。解散当日,引率者が数えたところ,17名(うち大人3名)の罹患者を確認したとのことで,延べ患者は20名を超えたものと思われる。中には軽度の発症で,すぐに治った者もいたそうである。症状は大人の方が強かったようで,まず異物感を感じ,翌朝には大量の眼脂と充血,疼痛を経験し,さらにかぜ様症状を呈した,と報告した者もいた。我々のもとを訪れた患者は比較的軽度で,潜伏期,罹病期間等からAHCの診断は下し得たが,出血,疼痛,眼脂等の症状は必ずしも全例に見られなかった。経過はいずれも良好で,3日位で治癒している。

 この合宿地には本県以外にも,同時にあるいは前後して,他府県から,さらに海外からの参加があり,それらの団体の中にも発症していた者がいたようである。また当宿舎の職員の中にも発症者がいたそうである。

 表1のうち,合宿に参加したのは,K94,95,93,96の4名で,いずれも8月3日は日曜日だったため,帰宅2日後の8月4日に来院している。このうちK94,95からはウイルスが分離できたが,K93,96からは分離できなかった。K97,100,101は家族内感染を受けたもので,児童の来院から2〜5日後に来院している。

 ウイルス分離には,FL,HeLaそしてRD−18S(愛知衛研・栄氏より分与)を用いたが,HeLa,RD−18Sともに初代の後半に明瞭なCPEが現れた。FLは検出率,CPE出現の早さの両方において少し劣った。当初ではCPEの現れ方からエンテロウイルスに的を絞り,シュミットプール血清(予研),抗CA24(ISMUNIT社),抗EV70(Lot.13525予研)にあたってみたが,いずれにおいても中和できなかったので,予研ウイルス中央検査部に検査をお願いして今回の結果を得た。

 感染経路については,容易には断定できないが,海水を貯めたプールに全員入ったということも聞いている。

 現在この合宿グループ以外のAHCについても検索中であるが,沖縄帰りの学生からさらに1株(RD−18Sのみ)分離している。



和歌山県衛生公害研究センター 今井 健二
眼科黒田クリニック 黒田 純一


表1.ウイルス分離状況(和歌山市)





前へ 次へ
copyright
IASR