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今年8月,横須賀市内のサーベイランス眼科定点に来院した急性出血性結膜炎(AHC)患者からEH24が分離された。同眼科医院では,8月9日から15日の1週間に7名のAHC患者が確認された(表1)。これらはともに典型的な臨床症状を呈しており,かぜ様症状などの全身症状を伴った例はみられなかった。7名のうち4名および2名は同一家族であり,また,患者の年齢は14歳から63歳と幅広い年齢層に及んでいた。初発患者と見られるY.T.は台湾から帰国した直後に発症しており,同家族内感染の原因ウイルスは台湾からの持ち込みを疑わせるが,他の患者については現在のところ感染源は不明である。一方,家族内感染の様子から推測される本ウイルスの潜伏期は2〜3日と考えられた。
ウイルス分離は患者の眼ぬぐい液を材料とし,HeLa細胞に接種,34℃,静置培養で行った。その結果,7例中4例からウイルスが分離され,EH24/70抗血清(予研・ウイルス中検より分与)を用いて4株ともEH24と同定された。また,HeLa細胞で分離陰性の3例について,さらにRD−18S細胞を用いて分離を試みたところ,初代の時点で2例からウイルスが検出された。これら2株については現在同定中であるが,CPEの所見や患者の疫学的背景を考えるとEH24と思われ,宮村の報告(衛生微生物技術協議会,第7回研究会,口演要旨集,P76)どおり,RD−18S細胞の感受性の高さが示された。
EH24によるAHCの報告は,これまで国内では沖縄県に限られており,今回の症例は九州以北で最初のものと思われる。EH24が東南アジアから北上し,台湾そして日本(沖縄および本州)へ上陸したことにより,今後,国内における本ウイルスの大流行が危惧される。
神奈川県衛生研究所 鈴木利壽 小田和正
船津眼科医院 船津英裕
表1.確認されたAHC患者とウイルス分離成績
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