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Vol.7 (1986/10[080])

<外国情報>
輸入胃腸疾患病原体の研究−英国


 1984年の後半,ギルフォード公衆保健研究所のI.セン・グプタ博士とR.Y.カートライト教授によって,最近外国旅行から帰国し,腸管病原体が分離されるか血清学的にA型肝炎の診断が確定された患者に関する詳細な質問状が集められた。462人の解答がコンピューターの情報を用いて分析された。71の検査室がこの調査に参加した。

 訪問国は61の異なった国々で,最も多かったのはスペインとポルトガルで,それぞれ29%および21%を占めた。

 最も高率に分離された病原体はサルモネラ(34%)で,そのうち18%はS.typhimurium,17%はS.enteritidisであった。カンピロバクターは25%,赤痢菌は24%(うち83%はソンネ赤痢菌,12%がフレクスナー赤痢菌)であった。ソンネ赤痢菌はポルトガルに非常に多く,アルガルベにおける胃腸炎の流行と関連があった。20人(4.3%)からは複数菌が分離された。チフス性患者は少なく,3症例(アラブ連合領の腸チフス1例,パキスタンからのパラチフスA1例,トルコからのパラチフスB1例)で,この事実は地中海諸国旅行にチフス予防接種は不要であるという方針を支持する。病原性大腸菌の報告がないことは,真実の反映というよりは参加検査室の分離に対する興味と能力に関連していそうである。A型肝炎を血清学的に確認した5症例がカルメーン,エジプト,インド,インドとネパール,インドとスリランカから帰国した旅行者中に報告された。

 全体としての男女比は1:1.2で,年歳は1歳以下から65歳以上にまでわたり,21歳から30歳が最も多く28%を占めた。

 輸入感染症については,医師の助言,検査室の調査,入院,薬の処方と労働日の損失が考えられる。この調査では全体の労働日の損失は2,560日,1人につき平均5.5日で,37人の入院患者の院内治療の全日数は260日であった。

 ここに報告された感染症はワクチンによる予防はできないので,良質の水の供給と適当な食品の調理法がたよりである。

(CDR,86/21)






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